『反吸血鬼 キラ・ドゥーラ』 その9


 ピアニストは、右手をお腹に畳んで深いお辞儀をして、赤いフェルトの布を鍵盤にひいてから、きちんと蓋をしめた。


 それで、10人ばかりはいた聴衆は散会したのである。


 やましんも闇に消えていた。


 『ふっ、まだ、若いな。が、よかった。』


 とか言い残して。


 するとふたりでひそひそやっているふみたいとふみたにに(句読点打て!)むけて、ピアニストが声をかけた。


 『ありがとうございます。シベリウスを、と言われたのは初めてですよ。ぼくは、限界音大のピアノ研究科に在籍している、アンドール・タバタです。週に、にさんかい、ここで弾かせてもらいますし。ノーギャラですがしね。もし良かったら、そこの喫茶‘’カレワラン‘’でお茶はいかが? ぼくが持ちますよ。ははははは。あそこは、父が経営しているのでダイジョぷなんです。』


 『ダイジョぷですか。』


 ふみたには乗り気である。いい取材になるかもしれない。


 ふみたいは、やや警戒したが、こちらも情報収集がねらいだから乗った。


 隠れたままの隊長は、こう、言った。


 『ついてゆこう。あのふたり、危ないかもしれない。』



      ⚠️









 


 

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