バイト2日目:初仕事(対戦)
2日目。
朝はちょっと早めに行って換気をしておく。横に工房があるので油断すると金属とオイルのにおいが店の中に充満するからな。
あとは昨日の仕事終わりに買ってきた苗を軒先にあった空のプランターに植える。そして横のベンチを掃除する。これで俺の瞑想スペースが完成だ。
普通にやることがなくてクソ暇。メサイアがどれだけ俺の生活に食い込んでいたかがわかる。
軍に居たら今頃実際に機体を乗り回せていたのに。そしてGで吐いていただろう。
☆☆☆
「おい、仕事の時間だ。」
「はい?」
「とっととシュミレータに行け。」
ビリーが外に出てきて言った。
「コンピューターじゃ分からないんだってよ。あとは人に通用するのか試したいらしい。」
今の時代軍じゃなくても企業の方でパイロットになれるもんな。はじめはゲーム感覚で覚えられるのもいいポイントだし。まさにそんな人だろう。
「うちのバイトのファングだ。シュミレーターの相手はこいつにやらせる。」
「ファングです。よろしくお願いします。」
「わかった!早速やろうぜ!三本先取な!」
見たとこ10歳ちょっとだな。じゃあブレードとか大好きだろ。
「ブレード2改、発進。」
改造部分は手に持っていた投げる用のヒートナイフを糸鋸ビームブレードにしたこととMBBの逆関節脚にしたところ。ヒートナイフは腰へ移動してある。
「なんだそのブレード!?」
「かっこいいでしょ。ブースター起動。ブレード起動。」
どこまでできるのかは知らないが、本気で行こう。
カリバーにもやった急停止投擲。あ、真っ二つになった。
二戦目。
ロックオンは機体の向きまで設定しているようだ。逆関節が生きるな。
サブブースター、メインブースターを出力を変えながらコの字型に移動して背後を取る、と見せかけて跳躍、壁キックして元居た場所まで戻ってきた。
速度に釣られて振り向いているので背中からぶった切る。勝ち。
三戦目。
ヒートナイフを投擲、弾かれる。その際に右腕を使っているようだ。横を殴りつける感じで。もう一本投げてカメラが腕によって塞がれた時に温めておいたヒートブレードで真っ二つ。勝ち。
『YOU WIN』
はい対あり。
「乗ってる機体は?」
「こんな奴!」
あー、全部の武装が威力重視のビーム兵器でクソ重いし冷却性能もかなり低い。中量機のフレームなのに重量機になっている。ブースターもパワーが足りていない。
「どうやって勝って来たの?」
「ブースターで突っ込んでビームを当てるんだ!」
典型的なゴリ押し。一撃当てれば勝ちだと思ってる。
「一発で敵を倒すのにレーザー砲は両肩にいらないよ。腕のレーザーライフルも重すぎる。俺だったら……」
説明しながら機体を組んでいく。
右手 電磁加速ライフル
左手 なし(ライフルが両手で構えるサイズのため)
右肩 分裂ミサイル
左肩 垂直6連ミサイル
タイミングを合わせれば回避方向をかなり限定することができるので、そこをぶち抜けば一撃。
「これでどうだ。コンピューターと戦ってみな。」
「わかった!」
素直でいい子だ。
1,2分後。
「勝てた!」
「良かったな。」
「ありがとうお兄さん!」
「どういたしまして。」
さっきの子はそのあとすぐに退店。
「おっさん、今みたいなのやってんのか?」
「おう。今は黒字だが、パイロットが未来で減ると未来で赤字になるだろ?だからシュミレータはタダで使わせてんだ。」
「なるほどなぁ。」
今みたいな子が増えるといいな。
「仕事はあんな感じでいいの?」
「ああ、ばっちりだ。」
「またなんかあったら呼んで。」
外に出てベンチに座る。
クソ暇だ。シュミレータも飽きる。仕事を増やしたい。
「はっ!」
ひらめいた!
「おっさんちょっと手伝って。」
「何にだ?」
「俺の仕事増やす。」
「ほう。」
要はシュミレータをゲームのように宣伝すればいいのだ。
おっさんには観戦モードで入ってもらい、俺はコンピューターと戦う。
まずはプリセット機体。ブーストで切りかかって横をすり抜けつつ肩のキャノン砲を撃つ。一機目撃墜。
こちらをキャノンで狙っている二機目をサブブースターで横に跳び回避、そのままブーストでジグザグに移動しブレードで切る。二機目撃墜
三機目に向き直りブースターを吹かす。キャノンで狙ってくるが、ギリギリで避けて右腕に被弾。左腕のブレードを胸部に突き刺す。
「撮れた?」
「データを保存しといたからあとで何カットか撮るぞ。」
「じゃあ何個かやるから保存しておいて。」
俺が今持ってる機体のデータはほとんどが軍用機体の改造なので、ブレード2改の武装はそのままでフレームだけ民間企業のものに変える。
戦闘開始。まずブースターが起動するまでのラグの間にレーザーブレードを起動する。そして出力の上がったブースターで一機目へと迫る。左手のブレードを右から左に、右手のブレードを上から下にちょうど十字になるように切る。一機目撃墜。
その場をすぐに跳び立ち、別機体のライフルを避ける。サブブースターを活用して向きを変え、背後のビルを蹴り飛ばしつつブースト。ライフルがもう一発来るのでサブブースター出力を最大まで上げて無理やり横に飛ばす。またビルを蹴り、左手のブレードを大きく振りかぶり袈裟切り、そして右足でキック。二機目撃墜。
「次は射撃機体でやりまーす。」
味方僚機を一機、敵メサイアを追加、僚機を狙うやつをライフルで落としていく。途中敢えて外し、そいつを今俺がいるビルの屋上までおびき寄せる。ブレードで切りかかってきたところを構えておいたキャノンで撃墜。
「こんなもんでいいか。」
「カメラはどんな感じにする?」
「やり方教えてくれれば俺でやるよ。編集も暇なときにしとく。」
広告用動画を作成することが仕事に追加された。
「あ。あとさ、シュミレータ内の映像を店内から見れるようにしない?横にモニター置けるでしょ。あった方がMBBの説明に便利だと思う。」
「デッドスペースだったからな。ちょうどいいか。」
この店にはこれまでお客さんしかメサイアに乗れる人がいなかったんでパイロット店員目線で結構変えられるところがある。
この日の残り時間はベンチに座って人通りを観察しよう。
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