入隊0日目:サンドラ条約

 最終的な機体がこれ。


 武装右手 セミオートライフル

   左手 エネルギーシールド

   右肩 ビームキャノン

   左肩 ヒートブレード

  その他 レーザーブレード(両腕)

 ギリ軽量機。

 各所に取り付けられたサブブースターで立体的な動きが出来、ブレードも使えてキャノンもついてて威力十分。

 ブースターは重量機でもぶっ飛ばせる共和国製トランジットブースター。元々輸送機に取り付けられているものをネメシス用にしたブースターで、軽量機に着けると速度が出すぎて重力軽減装置のキャパを超えるが乗れないわけじゃない。

 ちなみに帝国ではGに対応するためパイロットの体を一部機械に置き換える手術が流行っていたそうな。

 エネルギーシールドは実弾ビームミサイル問わず防げる優れもの。ダメージで損傷した部分を補修するという形で盾としての形を保つので一撃でぶっ壊されるとただのスクラップと化す。非展開時は左腕のビームブレードが使える。

 左肩のヒートブレードは手に持ち替えて使う。その際左右どちらかの手の武装は捨てなければならない。二刀流しないなら捨てるのはシールドかな。


「よし。これで行こう。」


「機体名は?」


「機体名ぃ~?あーっと……」


 俺がファングだからな、牙が有名って言ったら……


「サーベルタイガー、いや、スミロドンだ!」


「……それ、本気で言ってるのかい?」


「……?もちろん。エンブレムもそれで申請出したぞ?」


「ならいいけど。」


 何かあったっけ?……思い出せないから別に大事でもないな!


「さ、飯行こう飯。」


「待つのもめんどくさいしね。」


 シュミレータ室から少し歩いたら食堂に着く。


「さて今日は~、おお!焼き魚あるぞ焼き魚!」


「本当!?」


「おう!二人分頼んでくるわ。」


「お願いするよ!」


 食堂の人に焼き魚定食二人前を頼む。

 食文化なんて言葉が昔にあったそうだが今じゃ使われなくなっている。理由は単純、戦争による移民などでごちゃ混ぜになってしまったから。


「やっぱ米だよな。」


 おかげで東の田舎国家の最高にうまい飯が食えるんだから感謝すべきだ。

 焼き魚定食は米、ミソスープ、なんちゃらの塩焼きに漬物各種と葉っぱのおひたし。


「うい、持ってきたぞー。」


「ありがとう!はい、水。」


「サンキュー。」


 並んで定食を食べる。


「か、カリバーっ!」


 上ずった声。

 ああ、いつものあいつだ。


「よかったら私と一緒に食べないっ!?」


 えーと、オペレーター科のムーサ。どっかの神話の音楽の女神から取った名前らしい。パイロット科だけにコールサインがつけられるのでこれは本名だ。発言からわかる通りカリバーに惚れていてカリバーも満更でもなさそうなんだが告白はしてないしされていないらしい。黒髪の美人でカリバーと並ぶと王子と姫って感じがする。あと音痴らしい。名前負けでウケる。カリバーがムーサとカラオケに行った次の日ちょっとカリバー体調悪そうだった。

 そしてここまでカリバー好き好きオーラが出てるのにどさくさに紛れて近づこうとする輩が出てくる。


「ムーサ、「おい待てコラ。」あ?」


 こんな風に。

 名前は忘れたが何回かちょっかい掛けに来た奴だ。成績は総合で俺より上。俺は学科で下。パイロットとしては……うん。って感じ。


「女心が分からない男は馬に蹴られて死んだらいいんだよ、なあカリバー。」


「え?う、うん。」


「またお前かよ。騎士ごっこに付き合う暇はないんだよ。」


「はいはいこちらへどーぞ。」


 抵抗する輩を柱の裏まで運ぶ。


「なんで学ばないかね。」


「はぁ?関係ないだろ。」


「何回もちょっかい出してそのたびに嫌がられてるのわからねぇのかおめぇ。第一、誘い方と伝え方が全部ヘッタクソなんだよ。なんでナンパまがいのことすんだよ。」


「なんで部外者のお前に言われなきゃいけねぇ!」


「うるせぇ!」


 腹パン。ついでに顎。脈は、ちゃんとあるな。


「感謝するわファング。」


 帰ってきた俺は自分の席に戻る。

 ムーサから感謝の言葉を言われるが、カリバー以外にはこの感じなのによく諦めないなって思う。塩すらない、無味対応とでもいうべきか。


(なぁカリバー。そろそろ限界じゃね?)


(そうだよね……)


(ここまで待たせるのは男としてどうなのかと思うぞ。)


「ねぇ、何話してるの?」


「ああ、いや、なんでもないよ、ははは……」


 こいつ誤魔化すのクソ下手なの忘れてた。そのせいでちょっと怒ってる気がする。めんどくさいからさっさと食って部屋帰ろ。

 魚うめ~。


「……」


 なんか隣から視線を感じるが無視だ無視。


「ねぇカリバー、聞いてる?」


 視線向けてるせいで詰められててウケる。

 いやー米が進むな。


「ファング、あなたが無視しているせいよ。」


 横をチラ見すればハイライトが若干消えかかってるムーサさん。


(カリバーっ!てめぇ何してんだよ!)


(いざ告白すると決めたらとちょっと……)


(日和ってんじゃねぇよ向こうは勇気出してんのに!)


「うちの馬鹿がすみませんほんと。」


?」


 だるこいつ。


「だるこいつ。」


(ファング!声に出てる!)


 あちゃー、終わったかも。

 とりあえず残り少なくなった米を漬物と一緒にかきこむ。うめぇ。


「あ、ごめんさっきの奴に呼ばれてるんだった。先に帰るわカリバー。」


「ちょ、」


「待ちなさい。」


「お疲れ様でーす!!!!」


 あとは頑張れ、カリバー。


 ☆☆☆


『ひどいです。失望しました。』


『そうなる前に告白しときゃ良かったんだよ。』

『あからさますぎて疎ましがってるやつもいるんだぞ。』


『いつもありがとうね近衛騎士。』


『ちょっと前から呼ばれてるやつな。別に恥ずかしくないわ。』

『エクスカリバー(笑)』


 チャットアプリでカリバーと会話。

 明日は絶対に寝坊できないからな。そろそろ寝るのが吉だ。

 ただ眠くない。自室にあるものと言えばテレビにベッド、窓と机と花ぐらいだ。暇をつぶせそうなのもない。本どっかにしまってたっけな。


「探すのもだりぃ……」


 今からシュミレータに籠るのもなぁ……

 テレビだってこの時間帯じゃぁなぁ。


『今年行きたい!王国観光特集~!』


 王国かぁ。

 サルザ王国、共和国とは長年の友好国だ。四か国は東にスカッド帝国、西にウィール共和国、南にラフィ公国、北にサルザ王国の位置関係で存在している。この国々が今この世界の中心なのでまとめて四か国と呼ばれることが多い。

 友好関係には何か背景があったはずなんだが忘れた。むかーしの戦争で避難者を全部受け入れただとか何とかだった気がする。

 観光と言えばなんだろうか、お肉がおいしい、あとお城がある。ないのは共和国ぐらいなもんだけど。

 パーツは重量機が多め。全体的に防御性能が高いパーツが多い。カクカクしたデザインが多いメサイアパーツの中で丸っこいというか曲線的なパーツが有名。あと王国と言えばブレード、特に実体ブレード。

 細身なものが多いが耐久性に優れ、鋭く、軽く、デザインが美しい。共和国は直線的で武骨だが、王国製はその中にどこか優美さを感じさせる。しかし、どんな機体の邪魔をすることなく雰囲気を引き締める最良のデザインだ。

 ただ高い。一本で共和国製が三本買える。あと加熱と相性が悪いので純粋な切れ味で勝負しなければならない。


「いつか欲しいなぁ……」


 王国製は実体ブレード使いの夢だな。

 ちなみにビームブレードは公国が強い。起動時間やチャージ時間など威力以外の面は他国の物の上位互換だ。ビームブレードの威力なんて大した差はないのでほぼ完全上位互換。

 ただこれも高い。あと負荷が尋常じゃないので他の武装をまともに積めなくなる。威力も変わらないしデザインも大して見えないしでこっちはあんまり夢!!って感じはしていない。


『ここで、速報が入りました。サンドラ条約が締結され、ウィール共和国、スカッド帝国、ラフィ公国、サルザ王国の四か国全てが軍縮に同意しました。』


 グンシュク……軍縮!?


「軍縮!?」


 予想されるのは予算の減額、武装の制限。ブレードの長さとかだったらどうしよう。最悪なのはブースター速度の制限。航行距離も。

 サンドラ条約は共帝戦争後各国がネメシスや対ネメシス兵器開発に力を入れたことを危惧したラフィ公国が提案したもので、サンドラは公国の首都だ。内容的には平和条約、と聞いていたんだけど、結果は軍縮でした。くそったれ。

 ラフィ公国は正直言ってることがわけ分からないので嫌い。あと国家元首の目が逝ってて怖い。

 パーツは軽量機一式、中量機一式、重量機一式とそれぞれの重量に合わせた一種しかなく、武装も種類ごとに一つだけだ。あと国の部隊が全員フード付きマントをつけてる。たぶん宗教のシンボル。

 というか戦時中何もしなかったくせに急に出てくんなよクソ狸。王国は共和国の避難民を受け入れてさらに援助までしてくれたんだぞ。

 というか公国絶対裏で新兵器開発してるだろ。表向きは断れない理由出しといてさ。どうせ核だろ?核は禁止されなくなったんじゃなくて使われなくなったんだからな、多分核持ったネメシスだろ?


「戦争になったら公国の城にどでかいブレード突き刺してやる。」


 はーはーあーほらし。寝よ寝よ。




 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る