入隊0日目:機体作成

ふむふむ。どうせ他国のものは使えないので共和国の軍用品か民間企業のものになるが、なかなか難しい。というか共和国軍のパーツは上層部が中量機大好きなせいで軽量機と重量機の選択肢が少ない。はっきり言ってカス。


「イエロージュエルに機体の指定はないからな~。どうすっかね。」


軍用パーツを使えとかそんな規則はない。ブラックエッジは機体カラーは黒ですべて共和国軍のパーツとかいうクソ制約があるのだが。


「かといって民間企業だけってのもな。」


「今までの機体をベースにカスタムしてみたらどうだい?」


「多すぎて絞れねぇんだよ。データパンパンなの知ってるだろ。」


「弾薬費で除外しよう。少なくともミサイル機体は新兵では使えない。」


確かにその通りだな。ただでさえクソ高いミサイルを100発とか撃つ奴は無理だ。最悪の場合弾薬費の請求が俺個人に来てしまう。


「んじゃまずはブレードオンリーでいくか。ブレードは弾薬費タダだからな。」


「なんで100か0なんだい……」


俺たちはシュミレータに乗り込む。

データの入った端末を読み込み、機体を選択。

部屋から持ってきたヘルメットをかぶり、接続。そして操縦桿を握る。

ヘルメットに映るのは破壊された市街地の景色。


「パイロットファング、メサイア『ブレード2』はっしーん。」


「パイロットカリバー、メサイア『プリセット』発進!」


俺は分かりやすいように武装の後ろに番号を振っているというのに、こいつは機体名すら変えていない。というかこいつが作った機体は機体名どころか色が違うだけでほぼプリセットの機体そのままだ。

俺の機体は両手にヒートブレードを装備した機体だ。右手は人間でいうとこの片手剣、左手は両手で使えるサイズのロングソード。実体ブレードは持たずにレーザーのみの機体もあるが刀身はきちんとある方が投げやすくて良い。そしてこの機体はカリバーには初めて見せるものだ。もちろん初見殺しを狙っていく。


「「レーダー起動。」」


同タイミングでレーダーを起動、最短距離でお互いが近づく。


「ブースター出力最大。」


ブースターの出力を上げて一気に近づく。


「ブレード加熱開始。」


刀身部分が赤く光りだす。

カリバーはもう見えている。


「レーザーブレード起動。」


カリバーの声と共に青白いレーザーを腕から伸ばした黒一色が高速で接近。なんか速いな?ブースターを変えてるか内装を削って軽くしたか、そのどっちもかだな。

3……2……1……


「今ァ!」


機体前方の小型ブースターを起動、急停止と共に慣性の乗った右手のブレードをぶん投げる。右手の方だけ短くしているのは投げやすくするため、それと投げた後の重心バランスをとるため。両方ともロングソードで片方投げたら剣が地面に刺さってその隙にボコられたんでな。

ブレードを使う時は速度が大事だ。よほどの接近戦でもない限りブースター出力を上げて近づいて切るのがセオリー。カリバーの方を見れば、ほらやってきた。

カリバーはレーザーブレードでヒートブレードを迎撃。乗りたての人は回避を選択するだろうが、のちの攻撃に繋げるなら迎撃一択。ブレードを使うやつは出来ないと速攻で死ぬレベルの超必須技能だ。

だが俺はそんなに大きな隙を見逃せるほどに優しくはない。


「Bomb!!」


投げた剣を遠隔操作で内側から爆破する。「爆弾を内部に積むとか正気か?」とか整備士の知り合いに言われたが結局は目の前の敵を破壊すれば勝ちなのだ。


「いやっふーっ!」


ブースターを起動、接近して左のブレードで切りに行く。

ドカンと大きな音を立てた爆炎が晴れると、左腕を欠損したプリセットがこちらにキャノン砲の砲口を向けていた。


「うぉっ!?」


アラートを恐らく爆発音で聞き逃したのが痛かった。肩武装積んでたらバズーカが直撃して普通に死んでる。

回避は成功、そして横のビルを蹴る形で加速、ブースター起動。


「あーらよっと!」


「……っ!」


右手に持ち替えたヒートブレードでの切り上げは回避、ではこちらは?


「レーザーブレード起動!」


左腕のレーザーブレードを起動、オレンジ色のレーザーが黒いプリセットを照らす。そう、この機体は四本のブレードを持っている。

今度は当ててやる。


「……なっ!?」


左腕が動かない!関節部に弾丸を挟まれたか!?


「がはっ!」


コックピットのある胸部を直接蹴られた。

シュミレータが再現した強すぎる衝撃に操縦ができないでいるとその隙にと急接近してくるカリバー。

なんつー曲芸だよ!

蹴られた際に空いた装甲の隙間にアサルトライフルの銃口がねじ込まれる。


「ブレード起動ぉ!」


両腕のブレードを起動、完全に伸びきる前でリーチが確保できないため左腕で殴りつけるようにしてアサルトライフルを破壊するっ!ネメシスの膂力とレーザーの熱でまともに撃つのは不可能な状態!放すのが遅れたようで縄に引っ張られるようによろけるプリセット。その隙に展開しきった右腕のブレードを突き刺すっ!!


「お、らぁぁぁ!」


「キャノン発射!」


よろけさせる方向を間違えたっ!右肩のキャノンが狙いをつけずともこちらを向いているっ!


「関係なぁぁい!」


俺のブレードがプリセットの胸部、カリバーに直撃すると同時にカリバーが撃ったバズーカが俺のブレード2に着弾。


『DROW GAME』


シュミレータから一度降りた俺たちは顔を見合わせる。


「「一対一特化すぎて分からない。」」


少なくともブレード2はベースにするのはよした方がよさそうだな。


「次は射撃特化でいってみるわ。」


「わかった。でもモードを変えよう。」


「廉価版メサイアの殲滅だな。僚機設定でいいよな?」


「もちろん。」


廉価版メサイア、一回だけ現実で乗ったことがあるが性能は何もかもが通常のメサイアの下だ。だから数で補う運用がされているわけなんだが。うようよいるとバズーカとライフルを避けるのがだるくなってくるから通常のメサイアより嫌いだ。


「パイロットファング、メサイア『ライフル2』発進。」

「パイロットカリバー、メサイア『プリセット』発進。」


この機体はセミオートライフルを両手に持っている機体だ。腕部の可動域を多少犠牲にして反動吸収性能を上げている。重量的には重めの中量機だ。


「後ろから撃つわ。射線通してほしいときは言うぞ。」


「わかった。」


まず一体。ハイ二体。ブースター出力を調整してホバリング、そしてスナイプをしている。三体目。


「左。」


「了解。」


四体目。


~数分後~


「つまらんかった。」


「狙撃はうまいんだけどね。」


「近接は絶対いるわ。気が緩むし楽しくない。」


「でもライフルはありじゃないか?肩に適当に武装積めば戦える。」


「ライフルにヒートブレードだな。」


そうと決まれば早速組んでみよう。


「プリセットを呼び出して~軽量パーツにとりあえず換装~。」


試作一機目

武装右手 セミオートライフル

  左手 ヒートブレード

  右肩 37mm口径機関砲

  左肩 4連ミサイルポッド

軽量機体。

機関砲の反動でライフルをまともに撃てず敗北。


試作二機目

武装右手 セミオートライフル

  左手 ヒートブレード

  右肩 対ネメシスキャノン砲

  左肩 4連ミサイルポッド

軽量機体。

キャノン砲の反動で自滅。


試作三機目

武装 二機目に同じ

中量機体。

ブースター速度が出ずカリバーのキャノンに当たる。


試作四機目

武装右手 セミオートライフル

  左手 ヒートブレード

  右肩 レーザーキャノン

  左肩 四連ミサイルポッド

重量機体。

ブレードが振れず敗北。


試作五機目

武装 四機目と同じ

軽量機体。

勝利。レーザーキャノンは低反動では使いやすく、いい線行ってたが機体構成がカリバーとほぼ一緒だと気づく。


「万人向けなんだなプリセットの武装って。」


「そうだとも。怠惰じゃなく選択してあの機体に乗ってるのさ。」


「俺は普通に変えるけど。」


友人と乗ってる機体がほぼお揃いって流石に嫌だからな。

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