第18話
次の日。木曜の一時間目はロングホームルームに充てられていた為、大抵の場合は何かしらクラスでの話し合いに使われるか、何も議題がなければ自習するというパターンとなっている。
この日、僕は後者だと思っていた。クラスの委員長を務めている
僕も、その方がありがたかった。何かしらの議題といっても、少なくとも今までのどれもこれもが全くと言っていいほど興味のないものばかりで、僕がしゃしゃり出るまでもなく皆が決めて――いや、大抵は井上君の鶴の一声でいろんな事が決まってきた。
これからもきっとそうだし、そうあってほしい。僕が興味ない事は、僕の
普段は昼休みでしか味わえない安らぎの時間が増えた事に思わぬラッキーを感じながら、僕は窓の外の向こうに見える空をぼんやりと見上げる。今日は午後から少し雲が多くなってくるって天気予報で言っていたけど、雨が降らないのであれば別にいい。そう思った時だった。
「……はい、皆~。席に着いてちょうだ~い!」
一時間目開始のチャイムが鳴るまで、あともうちょっとという時だった。ついさっき職員室へと戻っていった木場先生が、やたら早足で教室に入ってきたのは。
……あれ? 自習じゃないのか?
僕がそう思ったのと、ベランダにいた上代さんのチッという大げさな舌打ちが風に乗ってやたら大きく聞こえてきたのはほぼ同じだった。
「ちょっと、コバセン! 一時間目は自習じゃなかったの~?」
ベランダへと続く大窓の向こうから顔を突き入れながら上代さんがお得意の文句を口にするのに対して、木場先生はもうすっかり慣れた様子で「誰がそんな事を言ったっけ~?」と軽くいなす。さすが教師歴二十年目のベテランだ。三年目で英語担当の
ほら、早く早くと右手をひらひらと動かす木場先生にそれ以上の文句を思い付けなかったのか、上代さんや彼女に付き従っていた女子達はしぶしぶと自分の席へと戻る。
その口惜しそうな顔から察するに、至福の時間を与えられそうになりながらふいにそれを奪われるのは確かに納得はいかないだろう。僕だって今、同じ気分だよと同情こそするが、だからといって助け舟を出してやる気はさらさらない。僕は亀のようにのろのろと動く上代さん達の背中をまるで観察するように見ていた。
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