第81話
「天野ちゃんはなぁ、この店の誰よりもていねいな
正臣は言った。
「初めて会った頃は、クソみてえな客に
「お、おいおい。マジでそれ言ってんの……?」
男は正臣の表情と言葉に、困惑と恐怖が入り混じって顔を引きつらせながら言った。
「あ、あいつにそんな価値なんかこれっぽっちもねえって。高校の時、あいつがどんだけビビリで俺達に従順だったか、あんた全然知らないだろ? あいつ、ただの一回も逆らったり、誰かにチクったりした事なかったんだぜ?」
「それは、てめえらがそこまで追い詰めてたからだろうが!
場の空気がビリビリと震えるほど、圧のある正臣の一喝。ここが人目から離れているとはいえ、それほど大きく迫力のこもった正臣の声はゴミ置き場の前から飛び出して、そのあたりまで一気に駆け抜けていきそうな勢いだ。
そんな将臣の一喝を、最も間近で浴びせられた彼はもう立っている事などできなかった。ついさっきまで汚いだの臭いだのと喚いていた場所だという事も忘れて、その場にへなへなと座り込んでしまった。
「あ、あっ……」
「今考えれば、天野ちゃんの
もう何も言えなくなってしまった男をギロリと見下ろしながら、正臣が言葉を続けた。
「俺も足を踏み込んでまだ日は浅えが、コンビニの
「……っ……」
ようやっとの体で、男は首を横に振る。その様に心底呆れ返ったように深いため息を吐いた後、正臣は「答えは実に簡単よ」と言った。
「こんな
ドンッと、己の胸元にこぶしを叩きつけながらそう叫んだ正臣のその言葉は、男がこれまで生きてきた二十年にも満たない人生の中で、最も強く深く響き渡った。
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