第一章
第5話
その男は、名を
年は三十三歳。反社会勢力組織・
十六歳になった頃から徐々に頭角を現していった彼の働きは、相良組の中でも群を抜いており、抗争に赴けば一切の負け知らず。世間では決して認められる事も褒められる事もない取り引きにおいても、決して組の損失に繋がった事はない。相良組のトップである
そんな正臣の異名は、「千人殺しのマサ」である。
これはどんなに殴られようが蹴られようが、果てには拳銃で二発や三発撃たれようが決して倒れないタフさもさる事ながら、強靭なまでのケンカの強さから畏怖されて付けられたものだ。
何せ普段から風邪一つひかず、熱すらも出さないくらい頑丈な上、時間ができれば相良組御用達のフィットネスクラブで汗を流している。ゆえに着痩せこそしているものの、びしりと着こなしている派手な柄のスーツを脱げば、その下は筋骨隆々のすさまじいものがあった。加えて腕力も人一倍あるので、敵対勢力の連中にとって正臣は目の上のたんこぶだった。
ある日の事だった。正臣の耳に、ある情報が舞い込んできたのは。
敵対勢力の一つである
ただでさえ短い正臣の堪忍袋の緒が、一気に切れた。
シノギはどこの組においても、大事な経済源だ。それを強奪されてはメンツが立たないし、何よりこの世で一番尊敬しているおやっさんの
それから、わずか十五時間後。単身で乗り込んでいった正臣は萩野組の事務所を三つ壊滅し、組員三十四名と相談役二名、自分と同じ若頭一名に重傷を負わせ、病院送りにした。
返り血を浴びつつも、己の身には一切の怪我を負わなかった正臣は、
これで、うちのシマは守られた。おやっさんの命が脅かされる事もない。これこそが極道、俺の生きる道。おやっさんもここまで動いた俺の事を、きっといつものように「よくやってくれたな、マサ」と褒めて下さるに違いない。早く帰って報告しよう。
正臣は、心底そう信じて疑わないまま、相良組への帰路についたのである。ところが、だった。
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