第23話
俺達が住むこの小さな片田舎の町は年々人口が減っていき、気が付けばいろんなものが目の前から消えていった。
コンビニがないのは元からあきらめていたけど、バスの本数が一気に五つも消えたのはなかなか堪えた。一度乗り遅れたら次の便まで三時間待ちだとか、とてもじゃないがやってられない。郵便局が移転になったのもきつかった。
その中でもやっぱり一番堪えたのが、俺達の代で通っている高校が閉校になるという事だった。
元々、隣県にある県立高校の分校として建てられ、俺達の町を含む三つの集落に暮らす子供達の為に活用されていたものだったが、全部で八人しか在校生がいない上、俺達の代で入学する子供が絶えるとあっては、とても運営は続けられないと判断されての事だったんだろう。
それを知らされた時は、俺も直樹も悲しかった。例え小ぢんまりとした規模と思い出しかなくても、俺達にとっては大事な母校が消えてなくなるという事だ。
俺達が卒業すると同時に、その存在がなくなってしまう高校。そんな辺鄙で消えかかっている高校に、何の物好きか転校してきた奴がいる。それが『あいつ』だった。
「……親の仕事の都合で、引っ越してきました。卒業まで半年ほどですけど、よろしくお願いします」
夏休み中、一回だけある登校日。俺と直樹しかいない三年生の教室に、担任に連れられて入ってきた『あいつ』はすでにこの高校のセーラー服に袖を通していて、にこっと笑いながらそう言った。この町に全く不釣り合いな白い肌はもちろん、くっきりとした目元にすっきりとした鼻筋、そして小さめな唇。その右端にあるほくろに至るまでかわいいと思えたし、肩までのセミロングもよく似合っている。俗に言う、一目惚れって奴だった。
「それじゃ、男子達の間にある席に座って。三人しかいない同級生だし、仲良くね」
担任に促されて、『あいつ』が俺と直樹の間に用意された真ん中の席に座る。高校に入ってからずっと同じクラスに女子という存在がいなかったものだから、俺も直樹も変に緊張して、『あいつ』に「よろしく」と話しかける事すらできなかった。なのに、『あいつ』ときたら。
「西本直樹君に、
最初のあいさつもろくにできないガキの俺達に、改めてそう言ってきてくれた『あいつ』の笑顔は本当にまぶしくて。照れ臭さも相まって、どもりながらも何とか二人そろって「よろしく」と言えた時から、俺達三人の高校生活が始まった。
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