第121話
「犯人も自首してくれたからさ、これで成仏できる~って思ってたんだよ? なのにあいつときたら、まるで私を安心させてくれないんだもん。二十年も独り身を貫いちゃってさ……」
あいつ……? あの、間宮さんって人の事を言ってるのかな?
そう思いながら麻衣が一歩近付くと、ヒロミは肩をすくめて「おかしいでしょ?」と言った。
「あいつとは幼馴染みの腐れ縁で付き合ってて、確かに結婚したいかもって思ってた。でも、私とあいつじゃ全然タイプが違うし、心のどこかではあきらめかけてたんだ。そんな時に、ね……」
「ヒロミさん……。だったら、まだ!」
「いや、もう潮時さ。そうだろ、ナルちゃん?」
ヒロミはベンチに座ったままの俊介に、そっと話しかける。俊介は真剣な表情で、彼女を見返した。
「私には難しい事はよく分かんないけど、心霊検事は話が通じない人ばかりなんでしょ?」
「まあな。あいつらなりの正義感があるから、全部否定するとゴネてうるせえし。……で? ここに来た心霊検事の名前は?」
「これです、鳴海先生」
麻衣が持っていた神崎京也の名刺を、俊介の目の前にかざす。それを見て、俊介は顔をしかめた。
「よりにもよって、こいつかよ……」
「鳴海先生、知ってるんですか?」
「ああ、嫌になるほどな」
今度は俊介が肩をすくめる番になる。それに麻衣もヒロミも不安そうな表情を浮かべたが、やがて彼は「しゃーねえな……」と呟いてから、
「ヒロミとは長い付き合いだからな。相手も相手だから、かなり面倒な事になりかねねえが、きっちり話をつけてきてやるよ」
と、言った。
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