第120話
「ごめんごめん、悪かったと思ってる。でもさ、どうしても気がかりで……」
「謝る事なんてないですよ、ヒロミさん!」
ヒロミの言葉を遮り、麻衣が力強く訴える。その目はどこか潤んでいた。
「だってヒロミさん、いきなり殺されちゃったんですよね!? それが納得できなくて、彼氏さんの事も心配だったから、そうやって地縛霊に……」
「半分はハズレ、かな?」
穏やかにそう言いながら、ヒロミはゆっくりと首を横に振る。それを横目に見ながら、俊介はベンチにどかりと座り込んだ。
「おい、昼ドラ的妄想小娘。ヒロミは自分の死を最初からきちんと受け入れてるぞ。でなきゃ、もうとっくの昔に悪霊になって、心霊検事にやられてる」
「え……」
「と、言っても、最初は自分を殺した犯人を憑き殺してやろうと思ったから化けて出てきたらしいけどな。そうだろ、ヒロミ?」
懐かしい思い出話をするかのように笑って、俊介はヒロミの顔を見やる。
そんなバカなと麻衣は言いたかったが、話を振られて照れ臭そうに頬を掻いてるヒロミを見て、思わず「うっそ~……」と小さく漏らした。
「ヒロミさぁん……」
「あはは、仕方ないじゃん。あん時の私、幽霊になりたてで訳分かんなかったんだもん。だから、犯人の夢枕に立つ事しかできなかったし?」
「それも一応、傷害罪に当たるんだがな。犯人が自首したらしたで、今度はこのベンチから動けなくなったとか大騒ぎしてるところに俺が通りかかったのが出会いだよ」
俊介は、腰かけているベンチを二度三度手のひらで軽く叩く。
その様子を見て、ヒロミは「それも仕方ないじゃん」とさらに苦笑いを浮かべた。
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