第114話

「今の、君の仕業かい?」

「え、何言って……。そんな事より、ヒロミさんに何やってるのよ!」

「自覚なし、か……」


 麻衣の言葉に答える事なく、京也は深い溜め息を吐く。四十代の男は、まだおろおろしていた。


「あ、あの……?」

「大丈夫ですよ、間宮まみやさん。この続きは、また後日にします。どうやらきちんと説明をしなくちゃならないようなので……」


 麻衣を見据えたまま、京也が言う。麻衣は、また全身が冷たくなったような気がした。





「……さてと。そろそろ、落ち着いて話ができるかな?」


 十分後。


 間宮と呼んだ四十代の男を帰した京也は、足元の『心霊六法全書』を拾い上げてから、ゆったりとベンチに腰かける。


 ふらつくヒロミの体を支えながらも、麻衣はそんな京也をキッと睨み付け、先ほどよりもさらに大声で怒鳴り付けた。


「何が落ち着いてお話よ! ヒロミさんに訳分かんない事やって……。あなたはいったい」

「僕? 僕はこういう者だよ」


 流れるような動きで、京也は懐から一枚の名刺を取り出して、麻衣の眼前にかざしてみせる。


 それには、『心霊検事 神崎京也』と書かれてあった。

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