第102話
「……」
「あの、先生……?」
マントの者の姿が見えなくなって、『心霊六法全書』が青い光を放つのをやめても、俊介は前を見据えたまま、黙っていた。
いつもの彼なら、このタイミングで嫌味の一発や二発ぶちかましてくるはずなのに、それがまだない。
かえって違和感を覚えた麻衣がそっと声をかけるものの、俊介からの反応はほぼ皆無だった。
麻衣を自分の背中で守るようにしていた俊介。その彼が、十年前までは優秀な心霊検事だった……?
十年前という、いつもの言葉の中に加えられた、初めて聞く新しい情報。それを確かめたくて、麻衣はもう一度声をかけた。
「先生。さっき、あいつが言ってた話は……?」
「ああ、まあな」
今度は、少し落ち着きを取り戻したのか、俊介が続けて答えた。
「間違えてはねえよ。十年前は、今と真逆の仕事をしていたってだけの事だ」
「真逆……? それっていったい」
「おい、そんな事より」
話を強引に中断させた俊介の視界の中心に、まだ目を覚まさない公太を見つめるマッキーの姿があった。
その姿が何だかいつもより薄い事に気付いた麻衣は、はあっと大きく息を飲んだ。
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