第100話

数分後。


 麻衣と同じく、西宮家に不法侵入した俊介は、そのまま階段をずかずか昇って、公太の部屋へとやってきた。


 俊介の目の前では、気を失ったままの公太と、その彼を守ろうとするかのように寄り添うマッキーの生き霊。そして、いまだ縛られたままのマントの者と、それをこわごわとしながらも見つめる麻衣がいる。


 俊介は麻衣のいる窓枠の近くまで足早に寄ると、彼女を自分の背に隠すようにして立った。


「え……?」


 結界陣を作る事もなく、その身一つで麻衣を守ろうとしているかのような俊介の行動に、彼女は何故か懐かしさを覚えた。


 これ、この感じ……。確か、どこかで……。


 だが、麻衣がその懐かしさの詳細を思い出す前に、マントの者がくつくつと笑い声を漏らした。


『久しいじゃないか、鳴海俊介。およそ十年ぶりだな。心霊弁護士に成り下がったという話は、本当であったか』

「まあね。あんたは相変わらずのようだな。重箱の隅を楊枝でほじくり返すみたいな仕事ばかりしやがって」

『くくく、褒め言葉として受け取っておくよ。昔のお前ほど、大胆不敵に動けないものだからね』


 そう言いながら、マントの者の怪しい二つの光がすうっと動いて、俊介の背中の向こうからちらちらと様子を窺おうとしている麻衣を捉える。


 それに気付いた俊介が、青い光を放ったままの『心霊六法全書』を無言で構え直した。

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