第99話

「……異議あり! それは明らかに過剰な執行であり、その被告霊には到底値しない罪状である!!」


 その言葉と同時に、窓の向こうから強い光の塊のようなものが飛び込んできて、マントの者の両腕に素早くまとわりつく。


 そして、塊だったものがみるみるうちに棒状に伸びていき、マントの者の両腕から全身にかけて縛り上げていった。


『むぅ、これは……』


 いきなり未知なるものに縛り上げられたというのに、マントの者から慌てる様子が見受けられない。むしろ、どこか感心しているような節さえある。


 いや、今はそんな事より! と、麻衣は窓枠の方まで駆け寄り、その向こうを見下ろす。すると、玄関先には少々息を切らした俊介が立っていて、『心霊六法全書』をやや前に突き出すような形に構えていた。


 『心霊六法全書』からは、例のごとく青い光が放たれている。それはマントの者を縛る光と呼応するかのように、徐々に強くなっているようにも見えた。


「……な、鳴海先生っ!」


 麻衣が思わず大きな声でそう呼ぶと、俊介は伏せていた顔をゆっくりと持ち上げ、これでもかと言わんばかりの苛立ちを込めて叫び返した。


「こ~の、超絶ハタ迷惑小娘が! おかげで、儲けなしの大赤字確定だ! いいか、俺が行くまでそいつ見張ってろよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る