第96話

だが、その時。


「ガウガウガウガウッ! グルルゥ~~!!」


 怒りに満ちた吠え声と共に、マッキーが公太の部屋の窓から飛び込んできた。


 公太の部屋は、家の二階に位置している。加えて、正確に言えば、窓から飛び込んできたのは、マッキーの本体から抜け出た生き霊だ。


 だが、マントの者に驚いた様子は微塵も見受けられない。


 公太の首を締め上げる左手はそのままに、同じく骨だけで形作られている右手を突き出して、そのまま飛びかかろうとしたマッキーの生き霊の頭を、やや乱暴に押さえ付けた。


『おや……。誰かと思えば、しぶとくこちらに居座っている犬畜生じゃないか。前に来た時も予告はしたはずだよ』


 マントの者のガラガラ声が、心底呆れ返っているかのように言った。


『西宮公太は今夜、突然の心臓発作を起こして、二十三年の生涯を終えると。君の寿命が尽きるタイミングを見計らい、一緒に連れていってあげるとも言っただろう……?』

「グゥ~ルルル! ガウガウガウガウッ!」

『そんな事、僕は認めてないだって? 君の気持ちは関係ないよ。もう決まってる事だ。いい加減、観念するんだな』


 マッキーの生き霊の頭を押さえ付けるマントの者の右手に、更なる力が加えられた。


 ギリギリと締め上げられ、ほぼ意識が途切れている公太の口から泡が吹き出し、マッキーの生き霊からも苦しそうな鳴き声がか細く流れてくる。


 もう少しで「仕事」が終わると、マントの者から不敵に笑う気配が漏れたが、それを許さないもう一人が開けっぱなしだった部屋のドアから飛び込んできた。

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