第95話
デリバリーのピザを自室でもそもそ食べていた公太だったが、何の前触れもなく現れた『それ』には、ただおののく他なく、大きく目を見開いた。
突然、部屋の真ん中に空間を裂くかのように真っ黒な穴がぽっかりと空き、そこから得体の知れぬ者が出てきたのだ。
全身をこれまた真っ黒なマントに包み込ませているその者は、人間ではなかった。フードを被ってはいたが、その中に顔がない。代わりに、目と思われる二つの怪しい光が公太をじろりと見つめてきた。
『……お前が、西宮公太かい?』
マントの者がしゃべる。ひどいガラガラ声で、聞き取るのもやっとだった。
「え……。あ、あの……?」
何が何だか理解できない公太の右手から、食べかけのピザが滑り落ちる。それが床に付く直前、マントの者がさらにガラガラ声を発した。
『いや、何……。大した用件でもないんだ。ただ、お前の寿命をもらいに来ただけで』
公太のすぐ目の前まで移動してきたマントの者は、その裾から左手を差し伸ばしてくる。その左手に皮膚や筋肉は全くなく、骨のみで形どられていた。
公太が思わず「ひっ!」と短く叫んだのと、その骨だけの左手が彼の首を掴んで締め上げたのは、ほぼ同時だった。
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