第93話
望みが叶って、子犬を飼う事になった公太は、彼にマッキーという名前を付けて可愛がった。
マッキーがドーベルマンという大型犬の種類であるという事で、クラスの皆はおろか、近所の人や散歩で通りすがる見知らぬ人からもマッキーを褒める声が飛び交い、羨望の眼差しが向けられてくる。
その度に、公太は嬉しかった。マッキーは大事な家族。何があっても自分を守ってくれるだろう、かけがえのない家族。これからも皆、ずっと一緒だと信じて疑わなかった。
だが、公太が小学六年になった頃、家の中の空気ががらりと変わった。
父親が経営していた大手企業の会社が、ささいな事がきっかけで不渡りを起こし、倒産寸前の状態に陥った。
それに加えて、母親の仕事も上手くいかなくなった。
これまで業界トップの座に君臨していたものの、新しい時代と後からやってきたデザイナー達が醸し出すセンスの波に押しやられた。やがて「古くさい」などというレッテルを貼られて、仕事は激減してしまった。
これまで挫折というものを味わった事がなかった両親は、その苛立ちをお互いに向けるようになった。
家で顔を合わせれば、お互いの失敗をバカにし、罵り合う。それが、公太にはとても耐えられなかった。
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