第88話

公太君の家に来てから、二年ほどが経った。


 僕の体はもうすっかり大人になって、さらに体力もついた。


 ダッシュも自信があるし、唸り声にも迫力が出てきた。この前の夜、泥棒が公太君の家に入ろうとしてたから吠えて噛み付いてやったら、後で皆から褒めてもらえて。


『よくやったぞ、マッキー。ほら、ごほうび』


 そう言って、公太君は大きな骨付き肉をくれた。幸せだった。




 でも、この頃から、何か皆の様子がおかしくなった。


 公太君のお父さんとお母さんは、よくケンカするようになった。公太君はそれが嫌みたいで、ずっと部屋にこもりっぱなし。そのうち、僕と遊んでくれなくなった。


 ある日、公太君はカバンに何やら荷物を詰め込んで、お父さんとお母さんに何も言わないでどこかに行こうとしていた。


 公太君、一人で黙って出かけるのはよくないよ。


 家の中ではリードをつけられてなかったから、僕は慌てて公太君の後を追いかけて。


 家の前の道路で追いついた時、公太君は動けなくなってた。大きな車がすごいスピードを出して向かってきていたから。


 守らなくちゃ、公太君を。


 とっさにそう思ったから、僕は公太君に体当たりして、突き飛ばした。


 そのすぐ後、僕は……。

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