第81話
その時。
「ま、待って……、待って下さい。開けます、開けますから……」
ドンドンと俊介が叩き鳴らす玄関の向こうから、かなりか細くておどおどとした青年の声が聞こえてきた。
それに続いて、実にゆっくりとした動きで、カチャカチャと解錠させていく様子が窺えて。
それから数秒後、そうっと玄関のドアが開かれていき、その隙間から麻衣と同じ年頃と思われる太り気味の青年が怯えた表情を覗かせてきた。
「あ、あの……。こ、こ、この家には、今、僕しかいないんですけど……。ど、どちら様、ですか……?」
肩をブルブルと震わせながら、青年は必死に言葉を紡いでいく。
ああ、嫌な予感がモロに的中した! しかもこのパターン、面倒臭さが十倍増しだ!
バリバリと頭を掻きながら、俊介は「どうも、こんにちは」と口を開いた。
「俺は心霊弁護士やってる、鳴海ってもんです。自分しかこの家にいないって事は、あんた、西宮さん?」
「は、はぁ……。
「聞いて字のごとくだ。あんたんとこの犬が相談……つーか、何かあったみたいだから、生き霊になってうちの事務所に来たんだけど、心当たりはねえか?」
「え……? い、生き霊? うちの、マッキーが……?」
そう言って、青年――西宮公太は、さらにゆっくりとした動きで首を伸ばし、玄関から顔だけ出す。
だが、ふとこちらを振り向いたドーベルマンと目が合った途端、彼はパッと隠れるように首を引っ込め、玄関のドアを閉めようとした。
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