Case.3 動物虐待
第60話
「……うっわぁ~。ずいぶん疲れた顔してんね、あんた。そんなにナルちゃんにこき使われてんの?」
数日後。いつもの歩道橋の袂にあるベンチを見下ろしながら、ヒロミが少し心配そうな声を出す。
ヒロミの視線の先では、麻衣がぐったりとベンチの背に上半身を預けて空を仰いでいた。半分しか開いてない両目の下はどことなくクマができていて、覇気が失われている。
「こき使われてるなんてレベルじゃないですよ。弁護士になるより先に、幽霊に呪い殺されそうです、私……」
そう答えた麻衣は、くしゃっと顔を歪ませた。
あれから、鳴海心霊法律相談事務所に何件か仕事が入ってきたが、その全てが幽霊に対する注意勧告だった。
ある時は、一人の女性に取り憑いた男の幽霊に対して、ストーカー規制法に反するからやめろと促したり。
またある時は、子孫の安全を守ろうとしない先祖霊に対して、現世でその行為はネグレストと呼ばれ、保護責任者遺棄になるんだぞと説教を喰らわせたり。
それらのどの現場にも、俊介は麻衣を強引に連れ出した。そして、幽霊達にある程度、しかも一方的に言い連ねた後は、後ろに控えさせた麻衣を指差し、
「ここまで言ってまだ文句があるなら、こいつが受け持つ。心霊弁護士助手という名の愚痴便所小娘だ。好きなだけ文句をぶちまけて、さっさと成仏しろ」
などと言う始末なのだ。
そのせいで、真に受けた幽霊達の呪いじみた愚痴を連日聞かされている。文字通り、呪い殺されそうだった。
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