第57話

「悪い事は言わない。心霊検事に嗅ぎ付かれる前に成仏しとけ。お前らの罪は明白なんだから、心霊検事が来たら俺でも弁護しきれねえぞ?」

「はっ! サツが怖くて暴走族やってられっかよ!」

「検事だっつーの……。いいか? 心霊検事に求刑されて、それがまかり通ったら、お前ら生まれ変わる事もできなくなるぞ。生まれ変わって、あんなきれいな子とイチャコラしたくないのか? そらっ!」


 ぱっとその場から数歩飛び退き、俊介は立体交差線道路上で正座をしたままの麻衣を指差す。


 何の合図もなしに振られて、一瞬反応が遅れた麻衣だったが、それでも俊介に言われた通りに、自分にできる最大限の笑顔を見せ、手を振った。白無垢の和風さをより醸し出そうと、ほんのちょっと小首をかしげたのはサービスだ。


 だが。


「ぎゃーはははははっ!」

「うひゃひゃひゃひゃひゃ! 何だ、あいつ! ガキじゃねえか!」

「いやいや、ガキどころか赤ん坊だ! 俺ら、ロリコンの趣味はねえよ~!」


 先ほどのマフラー音にもひけを取らない、大きくて下品な笑い声が響く。リーダーのみならず、他の仲間達も心底おかしいとばかりにゲラゲラ笑っていた。麻衣を次々と指差しながら。


 相手が幽霊だという事も忘れて、麻衣の怒りのボルテージが一気に上がった。


 鳴海先生は、まだ生きてる人間だからギリギリ耐えられるとしても、何で幽霊にまで一番気にしている事をバカにされなくちゃいけないのよ……!


 麻衣はすっくと立ち上がると、俊介から「絶対に出るな」と言われていた結界陣からあっさり出る。そして、ズルズルと白無垢を引きずりながら、リーダーに向かって怒鳴った。

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