第55話

今にもこちらに向かって爆走してきそうな暴走族の面々に、麻衣は耳を押さえながら必死に大声を張り上げた。


「な、鳴海先生っ! 早く説得するなり何なりして下さ~いっ! 耳が痛いっ、死んじゃいます~!!」

「笑わせんな、死ぬかバカ! 黙ってとびきりの笑顔を準備しとけ!」


 俊介も大声で返事をすると、けたたましいマフラー音に顔をしかめながらも、『心霊六法全書』を構えながら、ふらふらと彼らに近付いた。


「おい、こらお前らぁ! エンジン止めて、こっち見ろぉ!」


 胸いっぱいに空気を吸い込み、それを思いきり吐き出す勢いで怒鳴る。


 意外にもそれに気付いた暴走族のリーダーは、鉄パイプを持っていた片手を振り上げて、仲間達を静まらせた。


「…あ? 何だてめえは? 何の用だ!?」


 真っ赤な特攻服に逆立ったリーゼント、おまけにギラギラと鋭い眼光を光らせる彼は、どう見ても二十歳そこそこの若者だ。他の仲間達も似たような年頃で、各々がバッドなどを持っていた。


 これは、さぞ生前から鬱憤が溜まりまくってたんだろうなと思いながら、俊介は『心霊六法全書』を彼に突き出して言った。

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