第54話
「我は、心霊弁護士・鳴海俊介! ここに心霊法律第34条第1項目を発動する。被告霊は直ちに……どわぁ!」
先日の夜のようにカッコよく決めるつもりだった俊介の目論みは、わずか数秒で潰えた。
俊介が詠唱を終えるより早く、立体交差線道路の入り口の方からまばゆい光が次々と点る。
そうかと思った時には、耳がつんざかれるような爆音が飛び交ってきて、俊介はおろか、麻衣がいる結界陣の中までビリビリ伝わってきた。
そして。
「ひゃっほ~! お前ら、気合い入ってっかぁ!」
「おぉ~!!」
「今日もバリバリ飛ばしていくんで、ヨロシクゥ!」
「おぉ~!!」
けたたましいマフラー音がこだましていく中、威勢のいいダミ声が交わされるのを目の当たりにして、俊介はいろんな意味で頭が痛くなった。
主婦からの依頼を受けてすぐに調べたところ、つい先日、ここで一つの暴走族チームがバイクの多重事故を起こした。
かなり過激だったというリーダーを含む何人かが死亡したと分かったが、元から地域の鼻つまみ者だった彼らの死を悼む人など皆無に近い。
おまけに突然の事故だったせいか、それとも少々オツムが足りないせいなのか、彼らはまだ自分達の死を認識していない節がある。
だから嘆き悲しむのではなく、生前と全く同じ行動を取って騒いでいるのだ。
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