第51話



「もう~、あの人達ときたら! とうとう昼間でも騒ぎ出してたまんないんですよ! 今度こそお祓いしようかと思うんですけど……いいでしょ、鳴海先生!?」


 そんな金切り声をあげながら地団駄を踏んでいるのは、一本の古い立体交差線道路のすぐ脇に位置する一軒家で暮らしている主婦だ。


 まだ若いし、それなりに整った顔立ちはしているものの、よほどストレスがたまっているのか、以前に会った時より眉間のシワが深くなっている。また、金切り声や地団駄にも深みが出てきていた。


 たま~に、いるんだよなぁ~と、俊介はこっそり溜め息をつく。


 寺の住職や協会の神父、シスターなどは普段から彼らのすぐ近くで生活しているゆえに、感覚が研ぎ澄まされて見えたり聞こえたりする場合がある。


 だが、この主婦、生まれつきそういう感覚を持ち合わせていて、しかもそれを無意識に抑えるすべも心得ていた。


 だから、これまでの人生、そのせいで特に困った事はなかったようだが、主人と一緒に一軒家を建てた場所が悪すぎた。


 県外から引っ越してきたのだから知らないのも無理はなかったが、この立体交差線道路、地元で「魔のオバケロード」と呼ばれるほどの事故多発現場であり、数ヵ月に一度、ひどければ十日に一度の割合で死亡事故が起きる。


 事故で突然亡くなった場合の人間霊は、何故か現場に戻る事が圧倒的に多い。そして、自分の身に起こった現実を受け止めきれず、大声で嘆き、むせび泣くというパターンも……。

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