第49話

「……お、おばあちゃん!?」

「“タキばあ”で構わんよ。この辺の霊達からはそう呼ばれとるわい、ほほほ」

「ほほほって……じゃあ、タキばあちゃん。何でここに」

「何でって、ここはあたしゃの家。いつでもおるわい。ナルちゃんに閉め出されん限りはの」


 そう言って、また「ほほほ」と陽気に笑うタキばあ。


 そんな様子を見てるだけでは、とてもタキばあがこの洋館に留まり続けている地縛霊だとは思えない。昨夜の女子高生達の霊もそうだったが、ホラー映画で見るようなものより、よっぽど人間臭いではないか……。


 ぼうっとしている麻衣の横をゆっくりすり抜け、タキばあが「よっこらしょっ」と手をかざす。


 はっと気付いた麻衣が、何をしてるのだろうと視線を少し下げてみれば、先ほど自分が運ぼうとしていたダンボール箱と金だらい、洗濯板がふわりと宙に浮いているではないか。


「え……えぇ~~~~~!?」

「いちいち大げさな娘じゃのう。ポルターガイストも知らんのかい?」


 先日とほぼ同じ反応を示す麻衣に、タキばあがちょっと呆れたように溜め息をつく。


「長く地縛霊をやっとるとの、自分の周囲の物限定じゃが、自由に操れるんじゃよ。さ、その塩まみれの服はあたしゃが洗ってやるから、よこしな」

「え、で、でもっ……」

「行水も手伝ってやるわいな。それが済んだら、服が乾くまでこれを着な」


 タキばあが言うと同時に、ドアの向こうから何かがふわりと飛んでくる。


 それを見て、麻衣は絶句した。

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