第41話

もしかして、事故か何かで一緒に死んじゃった、女子高生達の浮遊霊って事? しかも、三十年もここの住職さんを苦しめてきた、いわゆる悪霊……?


 麻衣は、ゴクリと喉を鳴らした。


 鳴海先生は、あの『心霊六法全書』で彼女達を叩いてた。唯一の武器だって言ってたし、もしかしたら、あの本を使ってお祓いみたいな事をするのかも。


 だから、この結界陣に入ってろって言ったのかと、麻衣が足元の円に視線を落とした時だった。


「……これ以上大声で喚いてたら、騒音被害やら威力業務妨害やら不法滞在やらで祓われちまうから気を付けろよ? お前らの墓参りなら、俺がしてやるから。じゃあ、またな」


 ……え? じゃあ、またな?


 どういう事かと麻衣が顔を上げてみれば、こちらに向かって俊介が伸びをしながら歩いてくるのが見える。そして、その向こうでは少女達が「またね、なるり~ん♪」とのんきに両手を振って見送ってるではないか。


 信じられない光景に固まりつつも、麻衣は思った通りの言葉を口にした。


「ちょっ、ちょっと鳴海先生!? あの子達、ほっとくんですか!?」

「あ? 何言ってんだ、お前?」

「だ、だからっ……やっつけないんですか!? お祓いするとか!」

「はぁ~? 何で俺がそんな事しなきゃいけないんだよ。俺の仕事は、ああいう奴らの人権と尊厳を守る事だぞ」


 呆れ返った口調でそう言うと、俊介は麻衣の足元の結界陣の縁を右足で踏みつける。


 それと同時に『心霊六法全書』の青白い光も消え、少女達の姿もすうっと薄くなって見えなくな

った。

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