第39話

だが、次に俊介から発せられた言葉は、こうであった。


「逃げる必要はねえよ……。全くお前らな、いい加減にしろよ!」


 そう言って、宙にかざしていた『心霊六法全書』を再び高く振り上げ、ニタニタと笑っていた人影達に向かって次々と落とされた。


 バシン、バシン、バシンッ!


 自分がされた時と似たような音が三つも霊園に響いて、麻衣は思わず「え~っ!?」と声をあげてしまう。


 目の前で俊介に殴られた人影達は、さらに輪郭をはっきりさせていき、その中の一つが甲高い声を張り上げた。


「……もう~、イッタイじゃん、なるりん! 何すんだよ、チョベリバ~!」

「そうだよ。うちら、何もしてないじゃん!」

「もうMM5って奴? やっちゃっていい?」


 人影達は、それぞれが若い女の子の姿に変わった。三人ともお揃いの制服らしきものを着ているから、おそらく高校生くらいだろう。


 ただ、麻衣から見れば、彼女達はどこか異様だ。


 どう見ても日本人なのだが、世間は紫外線防止だの美白ブームだと賑わってるのに、それに反するかのようにやたら肌黒い。かと思えば、目元や唇は真っ白に塗りたくっている。


 指や腕にはジャラジャラとアクセサリーをたくさんまとわせ、意味が分からない言葉まで発していて……。


 そんな彼女達を順番に見渡した後、麻衣はそっと尋ねてみた。

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