第34話

俊介はぴたりと足を止めると、住職に向かって気だるそうに言った。


「どうも~。こちら鳴海心霊法律相談事務所で~す」


 その途端、住職がぱっと顔を持ち上げ、持っていた竹ぼうきを放り出すと、俊介にすがり付かんばかりの勢いで駆け寄ってきた。


「ナルちゃ~ん、やっと来てくれのたかぁ~! ワシはもう頭がおかしくなりそうじゃ~!」

「ああ、はいはい。分かったから寝不足でクマだらけの汚ねえツラ、これ以上世間に晒すな。檀家がまた減るぞ」

「寝不足なのは“あいつら”のせいじゃ~! ナルちゃん、早く何とかしてくれ~!」

「分かった、分かった」


 適当な調子で返事をして、俊介は霊園の方へと歩いていく。


 この住職さんが依頼人なんだろうか? だったら、もっとていねいな対応があってもいいのに……。


 辛そうに両目をごしごしと擦っている住職に一度深々と頭を下げてから、麻衣は慌てて俊介の後を追った。

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