Case.2 騒音被害

第31話

やっぱり、訳分かんない本でいっぱいだなぁ……。


 そう思いながら、麻衣は俊介が「ここは俺の書斎だ」と称した、例の行き止まりのドアの中の部屋をぐるりと見回した。


 先日は、あの老婆との契約の最中に近付いたせいか変な力に引っ張り込まれたが、今日はそんな事もなくすんなりと普通に入れた。


 内心ちょっと……いや、かなり怖々としていた自分がバカみたいに思えたが、それ以上に目の前の男の横柄な態度がたまらなかった。


「おい、そこの挙動不審小娘。ヒマなら俺にコーヒーを淹れるか、便所の掃除でもしてこい」


 革張りの椅子にふんぞり返るように座り、思いっきり見下した目線と口調を兼ね備えた俊介のそんな言動に、麻衣の中の導火線があっという間に火を噴く。


 麻衣はつかつかとした足取りで俊介の元に近寄ると、両手をデスクの上に乱暴に叩き付けた。


「あのですね! 私は家政婦として雇われたつもりはありません! 弁護士になりたいんです!!」

「ああ、そんな事言ってたっけな」


 忘れてましたと言わんばかりの口調ぶりに、ますますムカッとくる。


 だが、やっと入れた弁護士事務所。十三軒目の廃業になってもらっても困る。もういい加減に、「強烈悪運娘」のレッテルを剥がさなければ……!


 我慢よ我慢と自分に言い聞かせながら、麻衣はやや声量を押さえ込んでから言った。

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