第27話

ヒロミの言う事も一理あるかもしれない。


 今日は稔彦が目を覚ます時間より少し早くに家を抜け出し、検討しておいたいくつかの弁護士事務所を回って歩いた。


 だが、稔彦の言う通りに手回しが済んでいたらしく、たくさんの人の気配がした一軒目は麻衣がいくらインターホンを押したり声をかけたりしても誰も出てこなかった。


 二軒目も同じように居留守を使われた。三軒目に至っては鍵までかけられて無視される始末で。


 父親の影響力のすごさを感じたが、それと同時にたまらなく辛くなった。


 そんなに、そんなにお父さんは私が弁護士になるのが嫌なんだ。それほど、私の事が……。


 あと少し気を緩めてしまったら、涙が出てきてしまいそうだ。


 すん、と短く鼻を啜る音に、隣に立つヒロミが小さく溜め息をつく。


 そして、ほんの少し照れ臭そうに視線を外しながら、ヒロミの左手が麻衣の頭をそろそろと撫でてきた。


「ああ、もう。泣くんじゃないよ、こんな所で」

「べ、別に泣いてなんかっ……」

「親父さんに全部を邪魔された訳じゃないんでしょうが。逆に、ここに行けって言われたって……」


 ヒロミのその言葉にハッとした麻衣は、「で、でも!」と彼女を振り返って言った。

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