第23話

「人の夢を鳥のクソって何よ! 自分は訳分かんないオカルト男のくせに!」


 目の前で起きたあの出来事は、今でも信じられない。


 だが、実際に自分と言葉を交わしていたおばあさんがすうっと消えた。


 そして、あの男はそれを地縛霊と称し、しかもそうと知ってて事務所を借りる契約を交わしているとも言った。


 それは、つまり。


「聞いた事ない! 幽霊が大家の洋館を借りて事務所やってる弁護士なんて! ただ、おばけ屋敷に住んでる変わり者じゃない!」


 とても納得できないし、一人で抱えていられる事でもなかった。


 まずはヒロミに事の全てを話して相談してみようかと思い、例の歩道橋の下まで行ってみたが、少し待ってみても彼女は現れなかった。


 今日はもうデートに行ってしまったのかとあきらめ、今に至る。もう、すぐそこに家が見えていた。


「また、新しい事務所探さなきゃな……」


 ふう、と小さく溜め息をつきながら、麻衣は玄関のドアを潜り抜ける。


 が、その途端、麻衣の全身がびくりと震えた。


 玄関のドアを潜り抜けてすぐの所に、稔彦が仁王立ちで構えていたからだ。


 じろりとした目で見下ろしてくる稔彦の手には、麻衣が見つけた例のメモがあった。

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