第21話
「痛い! いきなり、何するんですか!?」
「ギャアギャア喚くな、うるせえ! 鼓膜が破ける!」
「喚きたくもなりますよ! 今、たった今ですよ! 目の前でおばあちゃんが消えて……」
「当たり前だろ、死んでるんだからな!」
「へ……?」
喚き声の次に出たのは、自分でもそうだと思えるほどに間抜けなもの。
思わずキョトンとして見上げてくる麻衣に向かって、男は畳み掛けるように言葉を続けた。
「あのババアは十年前、この家で孤独死したんだよ。でも、戦争に行ったっきりの旦那さんが帰ってくるまでは家から離れたくねえとか言って、そのまま地縛霊やってる。で、事務所が欲しかった俺は賃貸料支払って、ババアをこの世に縫い止めてやってる訳。さっきのはその契約を交わしてる真っ最中だったんだよ、それを……!」
男はキッと鋭い目付きで、麻衣を見下ろす。麻衣の体がびくりと震えた。
「どうしてくれんだ、こら」
男が言った。
「お前みたいにふらふらと何も考えてねえような不法侵入かつ職務妨害小娘に邪魔されて、借金増やされる覚えはねえんだよ。どんだけ俺が仕事こなさねえといけないか分かってんのか!?」
「へ、変な呼び方しないで下さいっ! わ、私はただ、ここに法律相談事務所があるって知って、バイトに入りたくて来たんですから」
「バイトォ? 募集なんかしてねえから、帰れ帰れ」
「な、何であなたにそんな事言われなきゃ……」
「俺がここの事務所の
男は長い両腕を組み、ややふんぞり返りながら言った。
「俺がこの鳴海心霊法律相談事務所の所長、
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