第19話

「おい! 何、邪魔してくれてんだ、ああ!? お前は俺を殺す気か!?」

「じ、邪魔って……自分で本を投げ出したんじゃないですか! 殺すだなんて、大袈裟な……。いや、そんな事より!」


 訳の分からない事を口走る男の言う事など今は無視するに限ると、麻衣は体を起こして老婆の元に駆け寄る。


 そして、「おばあちゃん、大丈夫だった?」と麻衣が老婆の肩に手をかけようとした時だった。


 するり。


「え……?」


 思わず、麻衣は声をあげる。今度こそと、もう一度手を伸ばした。だが。


 すかっ。すかっ、すかっ、すかっ。


「き、きゃ~~~~っ!?」


 どうしても、老婆の肩に触れる事ができない。何度伸ばしても、麻衣の手は老婆の肩や体を何度もすり抜けていって……。


 信じられない現象を目の当たりにして、麻衣の口から甲高い悲鳴が絞り出されていく。


 そうやって、またヘナヘナとその場に座り込む麻衣を見た男は面倒臭そうに頭を掻き、老婆は愉快そうにけらけらと笑い始めた。

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