第17話

何、これ……! 麻衣はぎゅっと両目を閉じる。


 まるで、自分には見えない巨人の大きな手に体を鷲掴わしづかみされたかのような感覚があって、ひどく苦しい。まるで息ができない……!


 嫌だ、怖い。誰か助けて、お父さん……!


 息苦しさと恐怖で混乱しそうになる麻衣。だが、それらはほんの数秒でぴたりと止まった。


「え……?」


 先ほどまでの苦しい感覚が嘘みたいに消え去り、代わりにふわりと柔らかい空気のようなものが麻衣の周囲を取り巻く。


 そうっと閉じていた両目を開いてみれば、まず見えたのは、年季の入った赤い絨毯が敷き詰められている床。


 そこにいつの間にか座り込んでいたのだと気付いた麻衣は、慌ててキョロキョロと周囲を見回す。状況から言って、さっき自分が開けようとした行き止まりのドアから続く部屋に違いなかった。


 とても広い部屋だった。


 どれくらいかと言えば、そびえ立っていると思わせるほどに大きな本棚がいくつも壁伝いにぐるりと囲んでいるのに、それでも全く窮屈さを感じさせないほど。


 その本棚の中には、分厚い書物がぎちぎちに並べられている。日本語や英語のタイトルのものはあまりなく、記号じみた解読不能な文字に麻衣は苦笑いを浮かべた。

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