第16話
洋館の中は広々としていたが、庭同様にほったらかしなのか、所々が埃っぽく、傷みもひどかった。飾られてるいくつかの絵画も色が剥げてて、情けない姿になっている。
一歩一歩進む度に廊下はギシギシうるさい上に、窓にはクモの巣が張ってるものまであった。
こんな所で、本当に法律相談事務所なんてやってるの……? と、麻衣がさらに不安を募らせた時、廊下の奥から二つの声が聞こえてきた。
「……あ、このクソババア! どうやって入ってきた!? 結界の
「はん! ここは元々、あたしゃの家だよ。それに、お札が落ちたのはナルちゃんの腕が悪かっただけじゃろ。さあ、早く三ヶ月分の賃貸料を払いな。さもないと……」
麻衣は廊下の奥を見やる。そちらはずっと行くと行き止まりになっているものの、そこにひときわ古くて大きなドアがあった。
二つの声は、どうやらその向こう側から聞こえてくるようだった。一つは先ほどの老婆のもので、もう一つは成人男性のもの。
あまり穏やかではないその様子に、麻衣は心配になって駆け寄った。
「おばあちゃん、だいじょ……」
「分かったよ、このガメツキババア! ……ここに、心霊法律第59条第1項目を発動する」
麻衣がドアに手をかけようとしたのと、男の声が訳の分からない言葉を口走ったのはほぼ同時。
そしてその直後、麻衣が開けようとしたドアが勝手に勢いよく開かれ、中からすさまじい何かが働いて、麻衣の体を思いきり強く引っ張る。
悲鳴をあげる間もなく、麻衣は部屋の中に引きずり込まれていった。
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