第13話
門扉の内側から洋館の玄関に至るまでは、どうやら小さな庭園といった感じではあったが、こちらももう何年手入れしていないのか、すっかり荒れ放題だった。
名もなき雑草がぼうぼうに伸び、花壇だった場所まで好き勝手に侵食している。かつて子供でもいたのか、大きなケヤキの木の足元には、小さくて古いシーソーが置かれていた。
そういえば、お父さんと一緒に遊んだ思い出ってあんまりないなぁ……。いつも、弁護士の仕事してるお父さんの背中を見てばかりで――。
わずかな風に煽られて、シーソーがギイギイと軋む音を立てる。それを見て、麻衣がそんな事を思った時だ。ふいに、ドンドンドン! と、何かを叩いているような物音が聞こえてきたのは。
反射的にそちらを振り返ってみれば、それはやはり洋館の玄関からで、いつの間に敷地の中に入ってきたのか、腰の曲がった一人の老婆が両腕を振り上げて玄関の大きなドアを叩いていた。
「こぉ~ら、ナルちゃ~ん! 居留守使ったってダメさね! とっととさっさと、ここを開けんか~い!!」
大声まで張り上げて玄関を叩き続ける老婆の身なりは、お世辞にもよいとは言えない。やたらと古めかしい上着に、つぎはぎだらけのモンペ姿。おまけに下駄を履いた足は裸足だった。
気になった麻衣は小走りで玄関に駆け寄り、老婆に話しかけた。
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