第11話
ふと気が付いて目を覚ました時、麻衣は自室のベッドでスーツを着たまま寝転んでいた。
そっか。あのまま、ふて寝しちゃってたんだ、私……。
ゆっくり起き上がって、ほんの数時間ほど前の事を思い出す。そして、自分がとんでもない事を口走ってしまったのも思い出した。
「どうしよう……。お母さんの事、言っちゃった……」
常日頃から言わないようにしてきたのに、売り言葉に買い言葉で口が滑ってしまった。麻衣の中で後悔の念がふつふつと上がってくる。
さすがにあれはひどすぎるよね、謝らなきゃ。でも、お父さんだって私にひどい事を言って……。
悶々と考えながら、静かに自室を出て、階段を降りる。
あれからだいぶ時間が経っているようで、廊下の窓の外はすっかり暗く、家中の電気も全て消えている。その事に、麻衣はほんのわずかに息をついた。
「お父さん、もう寝ちゃったかな……」
階段を降りきった所の壁にあるスイッチを使って、廊下に取り付けられている電球だけを灯す。
ぼんやりとした光の中、最初に視界に飛び込んできたのは、廊下の一角に置いてあるチェストと、その一番上にある固定の電話機だった。
いつもなら素通りしていたが、電話機の横に無造作に置かれたメモ帳がつい気になり、麻衣はチェストに近付いて覗き込む。そして、稔彦の字で大きく書かれた文字を口に出して読んでみた。
「
聞いた事のない名前の事務所のせいか、麻衣はしばらくそのメモ帳から目が離せなかった。
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