第6話
「ま、そんなに焦んない方がいいって」
ヒロミが言った。
「あんた、そうやっていっつも焦ってるから、何もいい事ないんだよ。もうちょっと落ち着いてバイトやれば?」
「前にもヒロミさん、そう言ってくれたでしょ。だから、島村先生の時は絶対にそうしようって。変にテンション上げたりして、落ち着きがないなんて思われないようにおとなしい子にしてようって……。なのに、なのに!」
「ああ、はいはい」
「なのに、何で私の悪運は私をそっとしてくれないんでしょうか~~~!!」
うわぁんと顔を覆いながら泣き事を言う麻衣に、ヒロミは小さく溜め息をついた。
実際問題、麻衣の言う通りなのである。
子供の頃からの夢を叶える為に少しでも勉強しようと、十八歳になって大学に通い始めてから、麻衣は何軒もの法律相談事務所にバイトや見習いという名目で入所した。
評判や裁判での手腕を見聞きして、自分なりに調べて考えた末に、いずれも優秀な事務所に入ったつもりだった。
だが、いざ事務所に入ってみれば、それまで評判や手腕が良かった弁護士達の腕は一気にガタ落ちし、次々と敗訴が決まる。おまけに事務所の内で何かしらの不幸に見舞われ、廃業に追い込まれていった。
この二年間で麻衣が入所した法律相談事務所は十一軒。これらはすでに全てが廃業し、先ほどの『島村法律相談事務所』が十二軒目となる。ちなみに廃業までの最短記録は先の通りで、最長記録はそれでもせいぜい一ヵ月ほど。
それゆえに、麻衣がヒロミから付けられた屈辱のあだ名は、『強烈悪運娘』であった。
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