第4話
「あらら~、すっかり丸焼けねぇ~」
「何でも、パソコンの配電コードに不備があって、そこから発火したそうですよ~? 島村さん、三日前に事務所構えたばっかりだったってのにお気の毒よねぇ~」
「怪我人が出なかっただけマシですわよ、奥さん。そうそう、そういえばねぇ……」
一人が火事とは関係ない話題を口にした事から、残りのおばさん達はすぐにそれに乗っかり、あっという間にビルの前から離れていく。
その後、わらわらと集まっていた他の住民達も実況検分にやってきた警察にたしなまれて次々帰っていくものの、麻衣はまだ動けなかった。
「そうよ、まだたった三日なのに……」
ブツブツと呟いていた声は、やがて少しずつしっかりとした言葉になって、麻衣の口から漏れ出てくる。
そして、キッと顔を持ち上げると、丸焼けのビルめがけて、思い切り叫んだ。
「バイトに入って、何で三日目でこうなんの~~!! 私、どんだけ運がない奴なのよ~~~~!!」
腰を落としたまま、じたばたと手足をばたつかせながら喚き散らす麻衣だったが、警察の人間達は一切構う事なく、各々の作業を進めていく。それがまた、麻衣の悔しさを助長させた。
「私はただ、弁護士になる勉強がしたいだけなのに~~~!!」
バイトに入ってから、三日目。これは、麻衣の「ある事」における最短記録更新の日数であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます