第4話

「あらら~、すっかり丸焼けねぇ~」

「何でも、パソコンの配電コードに不備があって、そこから発火したそうですよ~? 島村さん、三日前に事務所構えたばっかりだったってのにお気の毒よねぇ~」

「怪我人が出なかっただけマシですわよ、奥さん。そうそう、そういえばねぇ……」


 一人が火事とは関係ない話題を口にした事から、残りのおばさん達はすぐにそれに乗っかり、あっという間にビルの前から離れていく。


 その後、わらわらと集まっていた他の住民達も実況検分にやってきた警察にたしなまれて次々帰っていくものの、麻衣はまだ動けなかった。


「そうよ、まだたった三日なのに……」


 ブツブツと呟いていた声は、やがて少しずつしっかりとした言葉になって、麻衣の口から漏れ出てくる。


 そして、キッと顔を持ち上げると、丸焼けのビルめがけて、思い切り叫んだ。


「バイトに入って、何で三日目でこうなんの~~!! 私、どんだけ運がない奴なのよ~~~~!!」


 腰を落としたまま、じたばたと手足をばたつかせながら喚き散らす麻衣だったが、警察の人間達は一切構う事なく、各々の作業を進めていく。それがまた、麻衣の悔しさを助長させた。


「私はただ、弁護士になる勉強がしたいだけなのに~~~!!」


 バイトに入ってから、三日目。これは、麻衣の「ある事」における最短記録更新の日数であった。

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