第48話
「えっと……改めて、初めましてになるのかな? 私、今生は真守君のお姉ちゃんの冴島真琴だけど、前世は二十四歳で死んじゃった西村みなみっていいます。転生した理由は、前世の家族の幸せを見届ける為で」
「はっ。それはそれは、ご苦労様なこったな」
小バカにするような口調と共に短く鼻息を漏らすと、真守はじろりと真琴を見上げてから「……俺の前世は井崎恭平だ」と名乗る。それを聞いて、真琴はそういえばと思い出した。
そうだった。他の人の事は気にしないようにって思っていたけど、確かに死魂水先案内所で大声を出して悪態をついてた若い男の子がいたっけ。何となくな感じで印象に残ってはいたけど、まさかあの男の子が今生の弟になるなんて思いもしなかった。
「こんな偶然あるものなのね、ちょっとびっくりした……」
「偶然なんかじゃねえよ。全部あいつの差し金だ」
真琴の言葉にそう返すと、真守はじろりとした視線を今度はエンに向ける。それを受けてエンは、やれやれと大きく肩をすくめた。
「何がそんなにご不満な訳?」
エンが言った。
「あんたの望みは叶えてやっただろ? あんまり虫けらがいいって連呼するもんだから、最初はボウフラに転生させてやったろ? で、十日で立派な蚊になって、三時間後には蚊取り線香の煙に巻かれてめでたくジ・エンド! そしたら、また虫けらに転生させろだ何だとうるさいったらねえでやんの」
「キャンペーンなんだろ? だったら顧客の注文くらい、しっかりこなせよ」
「結構こなしたよな!? ボウフラの次は毛虫にして、その次はダンゴムシ、そのまた次はバッタで、またまた次は蜘蛛だったかな? そのまたまたまた次は……あ~もう忘れた! 閻魔帳なしに覚えられるか、何度もワンチャン繰り返す奴の事なんか!!」
自分の知らない所で相当こき使われたらしく、エンがこれまで見た事もないほどにかんしゃくを起こして地団太を踏んでいる。それを見て悪びれるどころか、ますます悪態をつくかのようにそっぽを向く真守に、真琴は再び視線を合わせた。
「ねえ、真守君……いや、今は恭平君って呼んだ方がいいのかな? あのさ、エンが立ち上げてくれたキャンペーンのおかげで、私達は転生してこれた訳なんだから、そこはもうちょっと感謝してもいいんじゃない? そんな使い捨ての道具みたいに、何度も転生したい理由は何?」
「あんたには関係ねえだろ?」
はんっとわざとらしい息の漏らし方をする真守を見て、「何これ、反抗期……?」と思いながら固まってしまう真琴。何とか視線だけを動かしてエンを見やると、真琴の意図を察してくれたのか、エンは懐から閻魔帳を取り出してある記述を読み上げた。
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