第41話
「だって冴島さん、入学してきた時から超有名だったからね。あの冴島コーポレーションのお嬢様がうちの高校に来たって、入学式の時なんかマスコミまで来てたじゃないか。僕ね、その時ほんのちょっとだけインタビューされたんだよね。冴島さんと同じ推薦入試を受けていた方なんですか、って。あんまり恥ずかしかったから、違いますって言って結局逃げちゃったけど」
あはは~と、また照れくさそうに頬を掻く雄一に、真琴は頭が痛くなった。雄一の言う通り、確かに成岡高校の入学式の際、マスコミが押すな押すなとばかりに詰めかけてきて、仕方なしと彼らのインタビューに応じた記憶はある。まさか、その時すぐ側に雄一もいただなんて……。
いや、違うか。雄一は、初めて会った時から
ああ、もう! 転生やり直したい! できる事なら、エンに希望書を提出するところからもう一度! そして、雄一にふさわしい女の子を必ず見つけ出して、その子と雄一のキュービッドになれたなら……!
しかし、前世の人生のやり直しがきかないように、現在進行形で進んでいる今生の一瞬一瞬もやはりやり直す事などできない。今できる最大限の努力を用いて、いい未来に繋げていく事しかできない。そう思うからこそ、真琴は決して腕組みを解かなかった。
「それはそれは……自分からチャンスを逃すなんて、西村君ってつくづく恥ずかしい人ね」
「え?」
「そのインタビューで、この私と同等の成績で合格しましたってひと言でも言っておけば、今より少しはマシな存在になれていたでしょうに。私、チャンスをものにできない男に魅力なんてこれっぽっちも感じないんだけど?」
「……」
「もういいかしら? いつまでも目の前にいられるのは不愉快なのよね」
ぷいっとそっぽを向いて、真琴は雄一が立ち去るのを待つ。お願いだから、これでもう愛想を尽かして。こんな女の子より、もっと心根の優しい女の子と素敵な恋愛をしたいと思って。心の中で、真琴はそう強く祈った。しかし。
「そうか、冴島さんの言う通りかも」
「……ん?」
「確かに僕は後先考えずに、ついぽろっと言っちゃったりするからなぁ。確かにあのインタビューの時、ちょっとでも自己主張できていたら、冴島さんの僕を見る目も今とは違っていたかもしれないね」
「え?」
「アドバイスありがとう。やっぱり僕の思った通り、冴島さんは優しいよ」
「ええっ!?」
「もう少し時間くれる? 今度はもっと冴島さん好みの告白をしてみせるから」
それじゃあ、と軽く手を挙げて、雄一は自分の席へと行ってしまう。それをぼうっと見送った後、一気に脱力した真琴は開いていた本ごと机に突っ伏した。
「何て打たれ強い子なの、本当シゲちゃんそっくり……」
そうつぶやくと同時に、真琴は茂之と結ばれた日の事をゆっくりと思い出していた。
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