第49話
あたしがスマホの着信に気付いたのは、午後一時をだいぶ過ぎた頃だった。
ホテルの部屋に備え付けられているタブレット端末でお昼ごはんのメニューを決めた後、拓弥はさっさとシャワーを浴びに行き、あたしは裸のまま、ベッドの上でゴロゴロしてた。
大してテクがうまい訳でもない拓弥の猛攻は、あたしのおなかに鈍痛を残していた。ゴムを付けてくれてるだけマシだったけど、それももうそろそろ物足りないって事になってくるだろうな。
『なあ、今度は生でヤッていいだろ?』
締まりのない気持ち悪い顔でそう言ってくる拓弥の様子が簡単に想像できる。
本当にそんな事言ってきたらLINEブロックしてやろうと思いながら、あたしはベッドのすぐ近くに置いてあったスマホを手に取って…ぎょっとなった。
LINEのアイコンに表示されている着信数がハンパなかった。ざっと五十回を超えてる。何かの不具合かいたずらかとも思ったけど、開いてみれば、全部お母さんのスマホからの着信だった。
ヤバい。学校サボったのがばれたんだ。結局おばあちゃん、チクッたんじゃん。
ああ、もう最悪。超怒られるのが目に見えてる。かと言って、誰か友達の家に泊まらせてもらっても、面倒な時間が後になって増えるだけだし。
どうしよう。どうやって、少しでも面倒な時間を短くしようかと考えていたら、独特の着信メロディがスマホから流れだす。液晶画面を見なくても、誰からの着信か分かった。
ああ、はいはい。分かりました、もう観念します。何で学校サボったのかって聞かれたら、素直に彼氏とエッチ三昧してましたって言おう。
あたしはスマホに指を当てて、電話に出た。
「はい、もしもし…」
『カナ!あんた今いったいどこにいるの!?』
受話音量を上げてる訳でもないのに、耳元でお母さんの金切り声がすさまじく聞こえてくる。エッチ三昧してましたと言おうとして、あたしは息継ぎをしたが、それが声に続くより一瞬早く、お母さんの言葉がまた聞こえてきた。
『今すぐ帰ってきなさい!大変な事が起きたのよ!おじいちゃんとおばあちゃんが…!』
「は?二人が何って?」
『火事よ、家事!いつも二人が行ってる喫茶店が火事になって、二人とも巻き込まれたの!だから早く帰ってきなさい…!!』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます