第41話



 おばあちゃんが死んだ日――六月十三日は、確か木曜日だったと思う。


 あの日、あたしは朝イチで拓弥からのLINEを既読にしてしまった事にうんざりしていた。




『今日、学校サボろうぜ』既読7:14

『隣町のラブホが開業五周年サービス中』既読7:15

『午前中までに入ると~?』既読7:15

『何と半額~!』既読7:16

『これはイクっきゃないだろ(笑)』既読7:17





 朝っぱらから、何て下品な奴なんだと、あたしの中でまた拓弥への気持ちが冷めていく。たぶん夜中にネットサーフィンでもしていて見つけたんだろう。


 既読スルーしてやる事も考えたけど、それはそれで後から面倒になる事も分かっていた。正直気が進まなかったけど、『分かった』とだけ返信して、セーラー服じゃなく少し前に買ったばかりの服を手に取った。


 友達と繁華街に行った時、たまたま通りかかったショップのウインドウに飾られていた一点限りのセット服。淡いピンクのインナーに短い丈のジーンズがベストマッチで、ひと目で気に入ったんだっけ。


 自分で言うのも何だけどよく似合ってるし、買ってよかったなって心から思う。今までの服の中でもダントツのお気に入りだ。


 だから、最初は何も考えずにこのセット服を着ていこうと思ったんだけど、拓弥の顔が頭をよぎった時、「何か、嫌かも…」なんて考えてしまった。


 最近の拓弥って、何に影響されてんだか、少し手荒いエッチを始めるようになった。


 さすがに破いたりはしないけど、乱暴な手つきで服や下着を脱がしにかかるし、女の口からは言いたくもないいやらしい言葉を浴びせるようになった。しかも、それであたしが喜んでると思い込んでるんだから、タチが悪い。


 この服を着ていったところで、拓弥のバカバカしい性癖の犠牲になる事は目に見えてる。やめたやめたと、あたしがセット服をベッドの上に放り落とした時だった。


 トントン、トントントン…。


 あたしの部屋のドアにノックの音が響く。こんな叩き方をしてくるのは、うちじゃ一人しかいない。あたしは返事をせずに、その人が入ってくるのを待った。

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