第40話

何でっていうからきちんと答えたのに、おばあちゃんが死んだ理由を話した途端、拓弥たくやからのLINEが途切れた。


 十分以上待ってはみたけど、やっぱり返事が来ない。面倒くさいと思われただろうか。そのうち、ブロックしてくるかもしれない。


 それならそれでいいかと思った。


 いつからだっけ? 拓弥の事、彼氏じゃなくてセフレみたいなもんだと思うようになったのは。


 確か、今月で付き合い出して半年くらいになる。最初の頃は、拓弥と一緒にいられれば何をしたって楽しかったし、二人してバカみたいに笑い合ってたけど、ここしばらくは、ただ会ってエッチするだけ。


 どうも今の拓弥は、ラブホの発掘に夢中のようだった。毎回、別のラブホを見つけては子供みたいにはしゃいで、必死になって腰を振る。フィニッシュの時、「あうっ」なんてまぬけな呻き声を出すと知ったのもつい最近だ。


 そんな拓弥とエッチしていても、幸せなんかこれっぽっちも感じなくなった。ただ、身体だけの快楽だけ。つまんない、おもしろくない。何かバカバカしい。


 LINEの画面を消して、あたしはスマホをベッドの上に放りだす。それと同時に、お母さんの声が部屋のドア越しに聞こえてきた。


「カナ。早く着替えて、朝ごはん食べなさい。おじいちゃんの側にいてもらわないといけないんだから」

「…はいはい、分かってるって~」


 適当に返事をして、あたしはクローゼットの中のセーラー服を取り出す。


 一度だけ、拓弥に「それ着たままでヤらせてくんね?」なんて言われた事があったけど、断固拒否した事を思い出して、ちょっとだけおかしくなる。


 そして、おばあちゃんに言われた事を思い出した。




『ねえ、カナちゃん。好きって事は、本当に大切な事なんだよ?』




 知ってるよ、そんな事くらい。だから今、拓弥に冷めかけてんじゃん。


 なら、おばあちゃんはどうだった訳?本当におじいちゃんの事、好きだった?一度だって、その口で言った事ないくせに。


 そんな事を思いながら、あたしはさっさとパジャマを脱ぎ始める。少し前、鎖骨の所に付けられたキスマークがまだうっすら残っていた。


 これが付いたその日に、おばあちゃんは死んだ。

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