第37話
「うちは託児所なんだよ! 夫婦ゲンカや離婚調停がしたいんだったら、家庭裁判所に行け!!」
興奮しきった夫婦より大きな声を出せるのか一瞬不安だったが、テニスサークルの打ち上げでよくカラオケ行っててよかったというべきか。俺の声は二人がぴたりと黙り込むには充分な声量を誇ってくれた。カラオケ好きだった岸間に感謝だな。
「そ、そうだな。日和様の子孫の家で悪かった……」
「ごめんなさい、つい我が子の事になるとムキになっちゃって……」
反動もあってか、繁足さんも伸子さんもしゅんとしおらしくなり、俺が出した粗茶をゆっくりと啜り出した。分かればいいんだよ、分かれば。
しかし、この夫婦。何て言うか……。
「二人とも、何かかなり見た目がきれいだけど……ファッション関係かなんかの仕事に就いてんの?」
そう。整った顔立ちもさる事ながら、とても日本人とは思えないほど見事なプロポーションをしていて、またそれにものすごく似合ったファッショナブルな服を着ていた。特に繁足さんが着ているアウター、某有名ブランドの最新作じゃね? 確かそこらのマンションの家賃より高かったはずだし、雑誌かCMでしか見た事ないぞ!?
「ああ。俺、ここのブランドの専属モデルやってるから」
繁足さんはまるで何でもない事のようにさらっとそう言ってから、どうしてうちに来る事になったのかその経緯を話してくれた。
繁足さん達足長の一族は、千年の時をかけて先祖から受け継いだ異能力を体格に移し替える事に成功した。その結果、彼らは代々180センチは軽く超える身長を手に入れ、おまけに運動神経にも恵まれてきたそうだ。繁足さんも例に漏れずって奴で、学生時代はいろんな体育会系の部活を網羅して充実した青春を送り、大学在学中にスカウトされ、「Sige」という芸名であっという間にトップモデルの仲間入り……って、同じ男から聞かされると結構ムカつくな。
一方、伸子さん達手長の一族は、同じように時間をかけ、先祖から受け継いだ異能力を手先の器用さに変換する事に成功した。そのおかげで、彼らは代々何でも器用にこなせる世渡り上手な性格を持ち合わせるようになり、どんな職業に就いても必ず成功を収めてきたそうだ。特に何十年かに一人生まれるか否かと言われるくらい、美しい両腕の造形を持って生まれてきた伸子さんは、かつては俗に手タレと呼ばれるパーツモデルの仕事だけでとんでもない額の年収を稼いでいたとか。結婚を機にそれも引退して、今は在宅でプログラミングの仕事をしているそうだ。
そんな二人が合コンで知り合い、できちゃった結婚をして、無事元気に生まれてきたのが一人娘の
で、その内容はというと。
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