第13話
「……おう、帰ったか優太! それじゃあさっそく、継承の儀式をしようぜ!」
須賀さんに抱えられて飛んでいき、実に四年ぶりの実家の前に辿り着いた。俺が生まれる前は平屋のボロ家だったらしいが、大工を営んでいる
こんな田舎の村に泥棒なんて来るはずもないから、玄関の鍵は相変わらず開けっ放しだ。だから遠慮も躊躇もなく玄関のドアノブを捻って開け、須賀さんと一緒に中に入る。そして、昔はばあちゃんの居場所だった一番奥にある和室への襖を開けると、そこには腰を痛めたせいで布団の中に寝っ転がっている親父と、金色の髪がやたらとまぶしい若い男がいた。
それまで何やら親父と話し込んでいたようで、金色の髪の男はあぐらをかいてこっちに背中を向けていたが、俺と須賀さんに気付くと肩ごしに振り返って二カッとした笑みを浮かべてくる。それを見て須賀さんはものすごい速さで膝を付いて、額を畳にこすり付けたが、俺はそいつの見た目と開口一番のセリフが非常に気に入らなかったので、持っていたスポーツバッグを顔面目がけて思い切り投げ付けてやった。
「後は継がねえって何回言ったら分かるんだ、この若作りジジイ!!」
「こ、こらっ、優太! 日和様に何て口をっ……、申し訳ございません日和様!」
俺の暴言を聞いて慌てふためいた親父が布団から跳ね起きようとしたけど、それより一瞬早く金色の髪の男が片手を挙げて制した。さらにムカつく事に、俺が投げ付けたはずのスポーツバッグは奴のもう片方の手でしっかりと受け止められている。くそ、今回もぶつけられなかった。
「おいおい、お久しぶりのご先祖様に対してずいぶんなご挨拶じゃねえか。ガキの頃から全然変わってねえでやんの」
「あんたにとってはお久しぶりでも、俺には見慣れ過ぎた姿だからな。人間の世界で目立ちすぎるなっつうの!」
そう言って、俺は金色の髪の男が受け止めたスポーツバックを指差す。奴は一瞬きょとんとしていたが、やがて何かに気付いたようで、勝手知ったると言わんばかりにスポーツバックのファスナーを開けて中身を漁りだし、あっという間に一冊の男性向けファッション雑誌を取り出した。
「おお。こりゃ、この間インタビューとグラビア受けた雑誌じゃねえか。何だよ優太、お前買ってくれたんか?」
「ほんの少しでも、あんたの露出を減らしたい一心で嫌々買ったんだよ!」
「それは無理な相談だなぁ。明日には
「ムダな抵抗だって事は分かってんだよ、クソジジイ! 許されるなら、あんたの正体を世間に言いふらしてやりたいくらいだ!」
「相変わらず、口の減らねえ坊主だなあ」
肩をすくめながらそう言うと、金色の髪の男はすくっと立ち上がって、ふう~っと長く息を吐き出した。その途端、和室の中の空気が一段と変わり、どことなく重苦しい雰囲気がそこかしこを包みこむ。俺の後ろで平伏し続けていた須賀さんが「ひいっ!」と短い悲鳴をあげた。
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