第8話
『……あ~っはははは! 本当、それ災難だったねぇ!』
夕飯を食べた後、美琴から電話がかかってきた。電話に出た瞬間、『図書委員どうだった?』なんて聞いてくるもんだから、あった事をそのまま全部話して聞かせたら、案の定大声で笑い転げられた。災難だったねなんて言ってるけど、絶対そう思ってない。むしろ、ちょっとおもしろがってるんじゃない?
「災難どころか、大災害って奴だよ。何、あの岡本って奴!」
スマホをハンドレスモードに切り替えて、自室のベッドの上にうつぶせでダイブする。ぼふんと弾んだベッドのスプリングの感触が気持ちいいけど、それもほんのちょっとの間だけ。何せ、明日は水曜日だもん。
「明日からいきなりあいつと二人で当番だよ? 何これ、何の罰ゲーム? 本当ありえない!」
『まあまあ。会話は必要最低限にしてさ、基本無視でいいじゃん。そもそも図書室なんだから、大しておしゃべりできないし』
「そうなんだけどさ。一緒にいるだけでも嫌って感じで」
『そこはもう我慢するしかないよね。隣のクラスだけど結局は一年留年してる人だし、何かと面倒くさいのは分かる』
「でしょ? なのに、あの態度だよ? もう信じらんない!」
あたしの口からは、ひたすら文句しか出てこない。美琴はいいな、自分の好きな場所で得意な事ばかりが活かせる体育委員だもん。そりゃあ、やる気もみなぎるってもんだろうけど、あたしは無理。マジで明日の水曜、どう過ごそう。
「ああ、もうサボりたい!」
『ナイスアイデアだけど、それやったら岡本君から呼び出し食らいそうじゃん?』
「……ありえそう」
うちの高校の校内放送は設備が古いわりには、結構響く。グラウンドの端っこにいても、ガリガリ、ガガガッ……ていう不快な音と一緒によく聞こえるくらい。だから放送委員会もそこそこ人気が高いのかもしれないけど。
『……二年B組図書委員の安藤さん。今すぐカウンター当番に来て下さい』
もしサボったりなんかしたら、絶対あたしが来るまでマイクの前から離れなさそう。
何考えてるか分かんない表情で校内放送用のマイクに向かっている岡本君の姿は、ちょっと想像しただけであたしの気持ちをさらにへこませた。
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