第15話
†
午前六時四十五分。けたたましく鳴りだしたスマホのアラーム音に、神薙大牙は最悪の気分で目を覚ました。
起き抜けの頭は非常に重く、上半身は起こしたものの、少しの間ベッドの上で動けずにぼうっと呆ける。だが、そのうち、昨夜から何も食べてないという空腹感に耐えかねた腹が情けない音を醸し出したので、仕方なしにのろのろとベッドから出た。
昨夜、乱暴に閉めたカーテンを、今度はゆっくりと開ける。途端に東向きの窓からまぶしいほどの太陽の光が差してきて、大牙は反射的に顔を逸らしたが、それと同時に、昨夜はどうしても元に戻らなかった瞳と牙がだんだんと治まっていく感覚を覚えていった。
「もう、マジで最悪…。太陽の光が最終手段なんて、どんだけだよ…」
心底嫌そうに呟いてから、大牙はパジャマから風見鶏高校の制服へと着替え始める。その顔は、もうすっかり普通の男子高校生のものへと戻っていた。
着替えを済ませた大牙は、やや急ぎ足で自室から飛び出し、台所に向かった。
昨夜はふて寝に近い状態でベッドにもぐりこんだが、食卓の方からはやたらと「ガツガツ、ムシャムシャ…おえぇっ!」と何とも不愉快な物音や声が聞こえていた。
ヴァンパイアのくせに、食べ物を粗末にするなんて許さないあいつの事だ。どうせ、あのニンニクたっぷりメニューを全部たいらげて出かけていったんだろう。
どっかで食中毒でも起こして、倒れていたらいいのに…!いっそそのまま、ご臨終してくれたらもっといいのに…!
そんな事を何度も頭の中でリピートさせながら、大牙は食卓に急いで入った。
思っていた通りだった。昨夜のニンニクたっぷりメニューはどこを見渡しても見つからないし、臭いの痕跡すらない。どうやら消臭も含めた後片付けもきちんとやっていったようだった。
その代わりとでも言うように、台所のコンロの前ではフライパンで不器用に目玉焼きを四つほど焼いている一つの人影があった。
早朝礼拝を終わらせたその身で準備を始めたのか、折りジワ一つない上品な神父服姿のままだ。
しまったと思った大牙は、慌てて人影の背中に向かって声をかけた。
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