第6話

女子と別れ、一人で暗い帰路をずかずかとした急ぎ足で進んでいく男子の名は、神薙大牙(かんなぎたいが)といった。


 年は十六歳。今年、私立風見鶏高等学校(かざみどりこうとうがっこう)に入学した高校一年生だ。


 先ほどの猛禽類のごとき鋭さから一転、とても涼しげな目元は優しさに満ち溢れていて、誰にでも好印象を与える。


 すうっと流れるように整った形の鼻の下にある口元も、先ほどと違ってさほど大きくない。唇の厚さもちょうどよく、にこりと笑えば誰もがつられて笑顔になった。


 要するに、一言で言えば文句なしの超絶イケメンなのだ。おまけに180センチ近い高身長ともくれば、そのスタイルの良さに振り返らないでいられる女子などいない。


 それなのに、今、大牙の表情にあるのはとてつもないほどの怒りだ。実に分かりやすいほど、その頬はひどく紅潮しているし、せっかく形のいい鼻からは「ふ~っ、ふ~っ!」と荒い呼吸が行ったり来たりしていた。


 郊外の住宅街にある道をひたすら東に向かってまっすぐ進み、その一角にある古びた教会の前で、大牙は一度ぴたりと足を止めた。


 学生服のズボンのポケットに入れて置いたスマホを取り出し、時間を確認する。


 PM8:15…。


 よし。この時間なら、「奴」は確実に教会の礼拝堂にいる。今日という今日こそは…!


 スマホを持つ手につい力が入りすぎて、ミシミシと嫌な音が聞こえてくる。


 それを無視するかのように大牙はポケットにしまうと、またずかずかとした足取りで、教会の中へと入っていった。

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