第三章 こんにちは
第43話
俺の中学校生活は、比較的穏やかにスタートした。
近隣にある三つの小学校から区域内に入る生徒百余名が入学し、その中から中学校最初のクラスメイトとなったのは、同じ小学校だったのっぺらぼうが五人と、後は名前さえ知らないよそののっぺらぼうが十八人の、計二十三人。
しかも、同じ小学校だと言ってきた五人ののっぺらぼうどもは、その六年間の中でただの一度も俺と同じクラスにはならなかった奴らだった。
「垣谷君、一緒のクラスになれてよかったぁ。このクラスで小学校から同じなのは私達だけかと思っちゃった」
「本当よかったよな。同じ小学校の同級生同士、皆で楽しくしていこうぜ?」
入学式の翌日に開かれたホームルームの時間、その五人ののっぺらぼうどもは何故か俺の机の周りに集まって口々に「よかった」を連呼していた。
俺には、どうしてこいつらが「よかった」を何度も口に出すのか、まるで分からなかった。
小学校の行事などで合同練習なんかをしょっちゅうやっていたから、一人一人の名前だけなら何となく覚えがある。だが、俺にとってはそれだけだ。それ以上は何も知らないから、他の小学校から来たのっぺらぼうどもと大差はない。
こいつらだって、そうだ。俺と一度も同じクラスになった事などないのだから、俺の頭の中の不具合の事なんて微塵も知らないんだろう。でなきゃ、こんなに無警戒に話しかけてくるもんか。
俺はそいつらに対してこう言ってやった。「いつまで仲良しこよしの小学生気分でいるんだよ、ガキくせえなぁ」と。
そうしたら、そいつらは翌日から俺の周りに集まるのをやめた。
いや、一人ずつなら時々俺の近くにやってきて、「おはよう」とか「ごめん、シャーペンの芯切らしちゃったから一本くれないかな」とか「今日の英語って小テストあったっけ?」なんて話しかけてはくる。
だが、同じ小学校の同級生同士で楽しくしようなんて言ってたわりには、それぞれが他の小学校からののっぺらぼうどもがすでに作っていた各グループに入っていき、二度と一緒になる事はなかった。
俺はどこのグループにも入らなかったが、誰も俺の頭の中の不具合を知らなかったから、特別疎外される事もなかった。
圭太のいない教室でのそういった立ち位置は、わりと悪くなかった。むしろ、小学校時代より居心地がよかったくらいだった。
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